2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

能もなき渋柿どもや門の内

先日、道端の街路樹に柿の木があった。柿の色が青空に映えている。葉は落ち、実は枝に鈴なりであった。近くに寄り、下から見上げる。一番の低い位置にある実は手が届かない高さにあった。 「能もなき渋柿どもや門の内」 夏目漱石の俳句で、明治31年(18…

ボルヘスの『記憶の図書館』

「ちくま」12月号で、国書刊行会の新刊広告を見た。 ボルヘス対話集成『記憶の図書館』である。垂野創一郎訳。 《ポー、カフカ、幻想文学、推理小説、日本、仏教、映画ーー20世紀文学を代表する巨匠が縦横自在に語った深遠で博大な118の対話。》 J・…

今年の3冊から

読売新聞の読書面に、「2021年の3冊」が掲載されていた。栩木伸明氏が、黒川創著『旅する少年』(春陽堂書店)を挙げていた。 編集グループSUREの『海老坂武のかんたんフランス料理』で、海老坂武さんと黒川創さんの対話が興味深かった。『旅する少年』…

「言葉の人生」

年末になると一年を振り返って新聞の書評欄に今年の本から「この3冊」といったアンケート特集がある。 18日の毎日新聞の「この3冊」を手に取ってみた。中島京子氏・選に橋本治著『人工島戦記』という本があって値段をみて驚いた。 堀江敏幸氏・選の「こ…

新刊案内から

書店にて出版社のPR誌を頂きました。「ちくま」12月号です。〈重箱のすみから 13〉(金井美恵子)と〈世の中ラボ〉(斎藤美奈子)の二人の連載が続いています。 筑摩書房の新刊案内にあるのですが、ちくまQブックスというシリーズ本が出ています。今月号…

雑誌「ユリイカ」、フレデリック・ワイズマン特集

雑誌「ユリイカ」2021年12月号を手に取って見た。特集・フレデリック・ワイズマンである。 昨年の5月に、アメリカの高級百貨店のニーマン=マーカスが経営破綻をしたというコロナ禍の中でのニュースがあった。 フレデリック・ワイズマン監督の映画『…

鴨啼くや上野は闇に横はる

先日、川にヒドリガモの群れがいました。渡り鳥です。群れはゆるやかに流れる川を静かに滑るように動いています。群れが大きく広がり、また集まってきて小さくなり、絶えず一時も止むことがなく動いていました。 「鴨啼くや上野は闇に横はる」 正岡子規の俳…