2005-07-01から1ヶ月間の記事一覧

丸元淑生の『秋月へ』のこと

丸元淑生の『秋月へ』1986年刊(中公文庫)は、夏のこの頃になると読みたくなる。 栄養学に基づく料理書、健康に関する啓蒙書の翻訳や執筆でおなじみの人なのだが、小説『秋月へ』は私には特別な作品だ。 九州の福岡県秋月から原子爆弾を投下され廃墟に…

丸善でブローティガンを買った頃

今、手もとにあるリチャード・ブローティガンの『アメリカの鱒釣り』は、Dell Publishingのペーパーバックで、1976年5月の5版である。 藤本和子訳の『アメリカの鱒釣り』(晶文社)は、1975年1月初版だ。 最初に読んだのは、晶文社…

空蝉とウナギの蒲焼き

あれほど鳴いていたセミの声が、正午前になるとピタリと静かになる。不思議なほどだ。彼らの体内になにかそれを感知するセンサーがあるかのようだ。鳴く時はみんなでいっせいに鳴き続ける。やめる時はみんなでピタリとやめる。判で押したような行動。昆虫の…

クマゼミの誕生

朝早くからセミが鳴き始める。ひときわ大きい音量。発生源へ近く寄って見る。カンナの黄色い花のそばのヤマブキの樹あたりが怪しい。茂った葉の中を目で探していると、セミがいた。ヤマブキの葉の裏側にしっかりつかまっている。透明の羽(はね)をしたクマ…

植草甚一責任編集の雑誌『宝島』のこと

早朝からセミが鳴き始める。音量が大きいね。ということは、近くで鳴いているんだな。音はすれども姿は見えず。クマゼミとアブラゼミのようだ。 黄色いカンナの花が咲いた。葉がなめらかで柔らかい。大きいなあ。 植草甚一スクラップ・ブックが復刊されてい…

『ニューヨーカー』を読んでいると思い出す植草甚一

蕪村の句に「半日の閑を榎やせみの声」がある。これは、なんとなく蝉の句の感じがする。もう一つ「蝉鳴くや行者の過(すぐ)る午(うま)の刻」の句は正午頃の時刻に行者が通り過ぎる情景としたら、蝉は蝉しぐれではなく一休みしている時刻になるんだが・・…

蝉しぐれと丸善の閉店のこと

朝早くからセミは鳴きだした。気温は30度を越す。蝉しぐれを聴いているとアブラゼミとクマゼミが鳴いている。正午前ごろから鳴きやんで静かになった。一休みしているのか。 [本]のメルマガ vol.218 7月5日発行が、「京都の丸善が今年の九月末で閉店…

ハスの花とイチョウの葉

夏至の日に訪れた池へ寄る。ハスの花があちこちに咲いていた。夕方でも、まだ明るい。花の色は白だった。満開の花の中央に実の詰まった蜂の巣状のものが見える。残りの花は、つぼみだった。つぼみは色が白で部分的に紅色が付いていた。大きさは手を握ったと…

梅雨が明ける

梅雨が明けた。アサガオが日々、蔓(つる)を伸ばしている。カンナの黄色い花が緑の葉に映(は)えている。アゲハ蝶がふらふらやって来て、見る間に去って行った。その速度には、いつも驚く。遅いように見えて逃げ足が速い。ふらふら、さーっ・・・、といっ…

小林信彦を拾う

黄色いカンナの花が咲いている。葉っぱが大きい。40センチの長さで幅が広いところで25センチはありそうだ。手に持ってのばしてみると何かを包めるぼどの面積のある葉。 夕方、古本屋にぶらり寄ってみた。以前あった書棚が消えてゲーム機が置いてあった。…

深呼吸の必要

梅雨の中休み。晴れ間の日に買ったアシタバの苗を植え替えた。雨空が続くと晴天の日、乾いた風を待ち望む気持になる。昨年のこの頃だったか、シネツインで篠原哲雄監督の映画『深呼吸の必要』を観た。90席のシネツイン1の方で。この後すぐに、シネツイン…

串田孫一さんの紀行文

雨は降ったりやんだり。梅雨空である。一日中、家で過ごす。 新聞で串田孫一さんが亡くなられたのを知る。山岳紀行で知られる随筆家で詩人、哲学者とある。89歳、老衰。串田さんの書くものでは、紀行文が好きだった。登山ものよりも海を見つめる串田さんの…

映画館館主と支配人の話

通販生活2005年夏号に、『名画座時代』という連載があって、第12回に広島サロンシネマが取り上げられていた。筆者は阿奈井文彦で広島市内に3年間暮したことがあるということで、よんどころなく日々を過ごしていたころ、サロンシネマの前身の鷹の橋名…

バートランド・ラッセルの『怠惰への賛歌』

1932年に書かれたバートランド・ラッセルの『怠惰への賛歌』(角川文庫)で、 私が本当に腹からいいたいことは、仕事そのものは立派なものだという信念が、多くの害悪をこの世にもたらしているということと、幸福と繁栄に到る道は、組織的に仕事を減らし…

へそと無意味なものの意味

「へそは何の役にたつのだろう。−−そんな疑問にとらわれることがある。何の役にもたちはしない。しかし、役にたつ、役にたたないというところに、からだの意味があるのだろうか。」と、『からだの日本文化』で多田道太郎は「へそ」をめぐって考える。 へその…

『岐阜蝶をさがして』と『ドクロ党の人々』

夕方、コンビニのセブンイレブンで「ビッグコミックONE」を見つける。勝川克志のマンガ 、『岐阜蝶をさがして』を読む。巻頭のカラーページで4ページの短編。色彩がきれいだ。 名古屋からの転校生との、ひと夏の岐阜蝶をめぐっての思い出の話。転校生は…