2015-01-01から1年間の記事一覧

原武史の「鉄道ひとつばなし」特別版「父と鉄道」(上)

読書人の雑誌「本」1月号に連載の原武史の「鉄道ひとつばなし」を読んだ。 連載が240回の20周年を迎えて、その特別版「父と鉄道」(上)である。 原武史さんが鉄道好きになったのは、《ひとえに父から受けた影響による。》 その父がどういう経緯で鉄道…

目つむれば悻せに似ぬ日向ぼこ

快晴で北寄りの寒風が吹く。陽射しは強い。最高気温13℃、最低気温5℃。 冬の青空に、南天(ナンテン)の赤い実が鮮やかに映えていた。 メギ科の常緑低木。本州中部以南の暖地に自生。葉は羽状複葉で、先のとがった楕円形の堅い小葉からなる。六月ごろ、白…

年末のラジオ番組から

18日、NHKラジオの番組で「すっぴん! 高橋源一郎▽源ちゃんのゲンダイ国語」のゲストに「電車道」の著者磯崎憲一郎氏が出演していたので耳を大にして聴いた。 小説の書き方、執筆の裏話などを語っていたからである。 「往古来今」や「電車道」の文章の秘密…

みいくさの馬糧の茶殻干せし冬

最高気温16℃、最低気温7℃。二十四節気のひとつ冬至で、晴れた。 冬至にしては、気温が高い日がつづく。 街路樹のツバキに満開の五弁花が見られた。 近くで見ると湯飲み茶碗のような形をした花である。 「みいくさの馬糧の茶殻干せし冬」 「人波のここに愉…

千葉伸夫著『原節子』

千葉伸夫著『原節子』(大和書房)を読む。 副題が「映画女優の昭和」。 帯に、 初の本格的評伝 原節子の魅力を 余すところなく 描き出す。 伝説の女優、 誕生から 引退の謎、 その全貌! 《(前略)ナチとの合作「新しき土」、若き天才山中貞雄の「河内山宗…

今月の新刊から

先日、水辺の生き物で潮の引いた砂浜にウミニナを観察する機会があった。 ヤドカリのようにウミニナも貝殻を背負ってゆっくりゆっくりと移動する。 海水の残った砂浜の窪地(くぼち)にウミニナが数十匹と団子状に集まっているのだった。 今月(12月)の新…

ヒキガエルのことなど

アステールプラザで「くらべてびっくり!いきもののあんな生き方、こんな生き方」というCompBiol公開講座に立ち寄る。 「くらべてびっくり!いきもののあんな生き方、こんな生き方」 参照:http://home.hiroshima-u.ac.jp/compbiol/public.html 市民向けの公…

蔵原惟繕(これよし)監督の映画『憎いあンちくしょう』

11月から旅をテーマにした作品や、特色ある地方を舞台にした作品を紹介する「特集・映画による日本紀行」が映像文化ライブラリーで開催されている。 蔵原惟繕(これよし)監督の映画『憎いあンちくしょう』(1962年、日活、105分、カラー)を観る。…

「谷崎潤一郎 引っ越しクロニクル」から

7日、快晴で空気が乾燥している。最高気温17℃、最低気温7℃。 二十四節気のひとつ大雪である。 8日、川面(かわも)に渡り鳥が見られた。 ヒドリガモの小さな群れである。 陽射しを浴びてゆっくりと移動していた。 「芸術新潮」12月号が出ている。手に…

映画『アンジェリカの微笑み』のこと

ラジオ深夜便の「ないとガイド」の「待ち合わせは映画館で」を聴いた。 映画評論家の青柳秀侑氏が出演していた。明石勇さんが聞き手である。 マノエル・ド・オリヴェイラ監督の映画『アンジェリカの微笑み』の試写を観た青柳秀侑氏が、その魅力を語っていて…

晴れし日の胡桃の落つる音と知る

快晴で、空気が乾いている。最高気温18℃、最低気温7℃。 11月は気温が高めであった。まだもみじの紅葉が見られる。 「晴れし日の胡桃の落つる音と知る」 「胡桃落つ日の夜となれば月明かく」 「土地の娘が仕えてぞ割る胡桃かな」 中村汀女の俳句で、昭和…

フィリップ・K・ディックの「高い城の男」

朝のNHKラジオ「すっぴん! 宮沢章夫▽愛と独断のサブカルチャー講座」で、フィリップ・K・ディックの「高い城の男」をめぐっての談話が面白かった。 ゲストの西田藍さんが「高い城の男」について語っている。 「高い城の男」はアメリカが第二次世界大戦で負…

吉村昭の戦争小説について

新潮社のPR雑誌「波」12月号で、川本三郎の「吉村昭を読む」を読んだ。 「敗者としての戦犯を描く」と題して吉村昭の戦争小説について論じている。 論じられているのは、吉村昭の『遠い日の戦争』で、主人公は昭和二十年八月十五日の直後、捕虜になったB2…

アサリと原節子さん

晴れた。最高気温13℃、最低気温9℃。空気が乾燥している。 浜辺にアサリを見つけた。殻(から)の模様が、それぞれ微妙に違っている。 マルスダレガイ科の二枚貝。淡水の流れ込む浅海の砂泥地にすむ。殻長約四センチ。殻表は粗い布目状で、模様は変化に富…

秋風とジープの走り無心なれど

23日は二十四節気のひとつ小雪であった。 北風がようやく強くなり、山茶花(さざんか)が咲く時期である。 曇り、最高気温21℃、最低気温13℃。 立冬が過ぎて、紅葉がまだ見頃である。 ヒサカキの実を見かけた。黒っぽい実が鈴なりだ。 小高木といった樹…

『お早く御乗車ねがいます』を読む、「可部線の思い出」

「図書」10月号が800号記念で、「『図書』八〇〇号と阿川弘之先生」(関川夏央)を読む。 《「汽車ポッポ」好きで知られた阿川さんが、最初の鉄道エッセイ集『お早く御乗車ねがいます』を刊行したのは五八年七月、三七歳のときで、こんなものが本になる…

まだ青き檪(くぬぎ)落葉はことに燃ゆ

海藻が砂浜に打ち寄せられていた。 小さな砂礫(されき)の浜である。 調べるとアオサとオキツノリのようである。 アオサ科の緑藻。海岸の岩石に着生し、濃緑色で平たく、ところどころ穴がある。あなあおさ。 『大辞泉』 波に洗われてみずみずしい色をしてい…

栗を焼く伊太利人や道の傍(はた)

16日、午前一時半ごろにオリオン座が南中していた。 月明かりがないので、天体観望に最適だった。 シリウスが明るく輝いている。 星と星を結ぶ大きな六角形の冬のダイヤモンドを眺めることができた。冬の星座が華やかだった。 天に星、地には山茶花(さざ…

渡り鳥と「The art of living」

渡り鳥を見かけた。ヒドリガモである。 数百羽の群れだった。壮観だ。 川面(かわも)に一面に群れていた。川の流れがゆるやかで隊列をつくった鳥の位置が絶え間なく変化してゆく。 その変化してゆく鳥たちの並び方が岸辺から眺めると、その形が色々なモノを…

牡蠣むきの殻投げおとす音ばかり

海辺の浅瀬にアサリを見つけた。 水中のアサリが列をなしている。また、海草にふんわりと包まれたアサリもいた。 付近の岩場には牡蠣(かき)が見られる。 自然に岩礁に付いて育ったものだろう。海水が透明できれいだ。 「牡蠣むきの殻投げおとす音ばかり」 …

佐藤忠男著『喜劇映画論』3

佐藤忠男著『喜劇映画論』を読む。 「愛嬌について」「ふたたび、愛嬌について」で、日本の喜劇俳優をめぐり、その芸について佐藤忠男さんは、記憶を頼りに彼らの芸を書きとめている。 これが面白い。 まず、小津安二郎の無声映画時代の斉藤達雄、「大人の見…

遠き鷹石の橋梁岩を綴る

8日、二十四節気のひとつ立冬である。最高気温20℃、最低気温18℃。 しばらく青空の秋日和がつづいていたが、どんよりの曇り空で時雨(しぐ)れた。 紅葉は見頃になっている。 中村草田男の昭和十八年の俳句で、「遠き鷹石の橋梁岩を綴(つづ)る」に、 …

木の実だく栗鼠木がくれに秋しぐれ

もうすぐ立冬、街路樹のドングリ(団栗)が地面に散らばっている。 帽子をかぶったドングリも見られた。 白樫(シラカシ)の実のようだ。 「木の実だく栗鼠(りす)木がくれに秋しぐれ」 飯田蛇笏の俳句で、昭和二十一年(1946年)の句、「廬後大谷山道…

佐藤忠男著『喜劇映画論』2

山野は紅葉が始まり乾燥した晴れ間がつづく。最高気温20℃、最低気温10℃。 どんぐりも転がっているのでひとつ拾ってみた。 山口昌男の本が今年になって二冊刊行された。 その一冊が山口昌男著『エノケンと菊谷栄』です。 エノケンこと榎本健一の劇団ピエ…

佐藤忠男著『喜劇映画論』

新刊で佐藤忠男著『喜劇映画論』を読む。 サブタイトルが「チャップリンから北野武まで」である。 「はじめに」より一部引用。 《人間は笑わずに生きることはたぶんあり得ない。なにをどう笑うかこそが、社会のありようをきめるものであり、人生の幸不幸を左…

落語「稽古屋」と古今亭志ん生

昨夜のNHKラジオ深夜便の落語百選「名人芸を味わう」で古今亭志ん生の落語「稽古屋」を聴く。 ゲスト、池波志乃。解説、田中優子。 昭和34年10月1日NHKラジオ第1放送で放送された音源から聴いた。 ゲストの池波志乃さんと解説の田中優子さんの談話…

釘打つて今日はあそぶ子秋風に

先日、干潮の砂浜に巻き貝を観察した。 細かい砂粒ではなく、小石と砂の混じった砂浜に棲息(せいそく)している。 一面に群れて広がっている。調べると、海蜷(うみにな)であった。かたつむりが動くようにゆっくりゆっくりと移動している。 じっとしている…

月まとも輝きにけり幼な顔

24日は二十四節気のひとつ霜降であった。 朝晩が冷え込み、樹木の紅葉がすでにはじまっている。 26日、快晴。最高気温21℃、最低気温9℃。 昨夜は十三夜の月で美しい月が眺められた。 「警報下秋灯に寄せ時計巻く」 「働きし身のさわやかに夜の菊」 「…

『ヨーロッパ特急』を読む2

阿川弘之著『ヨーロッパ特急』は昭和38年(1963年)9月発行の本である。 一九六三年四月二日 機上。 エール・フランス一九七便、香港、バンコク、ニューデリー、テヘラン経由パリ行。 目次 第1日 機上 第2日 ローマ 第3日 パリ 第6日 ハンブルグ …

『ヨーロッパ特急』を読む

阿川弘之著『ヨーロッパ特急』を読み終える。 阿川弘之著『ヨーロッパ特急』は昭和38年(1963年)9月発行の本で、装丁は柳原良平。表紙は柳原良平のイラストだ。 六十日間、阿川弘之は、ヨーロッパ、ソ連、アメリカ合衆国を鉄道、飛行機、車、豪華客…