2022-01-01から1年間の記事一覧

マリノス・カルティキス監督の映画「老人」

8月に「EUフィルムデーズ2022映画でつながる、ヨーロッパ」映画祭で上映された一本。 マリノス・カルティキス監督の映画「老人」(2020年、キプロス、ギリシャ、84分、カラー、Blu-ray、ギリシャ語、日本語字幕)を鑑賞。 老いと孤独をテーマにし…

「夕子ちゃんの近道」

中央公論新社から出ていた文芸誌に「アンデル」という名前の小冊子があったのをご記憶の方は今もいるだろうか。創刊は2015年1月号からである。創刊号からはじまった連載小説に、長嶋有の「三の隣は五号室」というタイトルの小説があって、毎回愉しみに…

映画「ツユクサ」

今年観た映画を振り返ると、平山秀幸監督の映画「ツユクサ」があった。主演は小林聡美。小林聡美といえば、フィンランドのヘルシンキを舞台にした荻上直子監督の映画「かもめ食堂」が思い出されるのだが、映画「ツユクサ」も印象深い作品だった。 映画『ツユ…

新刊のエッセイ

八朔(はっさく)の実る季節になった。青空を背にして果実の黄色い色が鮮やかだ。ミカン科ミカン属の常緑広葉樹。近くに寄って眺めると、葉に艶(つや)がある。 八朔は甘味と酸味にほのかな苦みのバランスがよい。爽やかな香りもよい。 ミカンの一品種。果…

映画「ミセス・ハリス、パリへ行く」

アンソニー・ファビアン監督の映画「ミセス・ハリス、パリへ行く」(2022年、116分、イギリス)を観る。 ポール・ギャリコの小説「ミセス・ハリス、パリへ行く」が映画の原作。 舞台は、ロンドンとパリ。時代は第二次世界大戦の終わった1950年代…

新刊から

新刊で、『鶴見俊輔、詩を語る』に注目。詩人の谷川俊太郎と元教え子の詩人正津勉とによるインタビュー、詩をめぐる話題だけでなく内外の同時代人の人物評の証言も興味深い。 鶴見さんの詩も一読を! 《出鱈目の鱈目の鱈を干しておいて 夜ごと夜ごとに ひと…

「言葉の人生」

片岡義男の『言葉の人生』を読む。 《一九五〇年の「バッテンボー」からさかのぼること二年、一九四八年、昭和二十三年、僕は疎開先の山口県岩国から広島県呉へ移っていた。九歳になって半年後の夏の終わり、広島リッツ劇場という映画館の前に僕たち子供が集…

PR誌から

新潮社のPR誌「波」8月号と9月号に「45冊! 新潮文庫の松本清張を全部読む」(南陀楼綾繁)が、短編小説編と長編小説編の二回に分かれ掲載されていた。没後30年に当たる企画。 《清張は一九〇九年(明治四十二)十二月に現在の北九州市で生まれたとさ…

映画「言葉と行動」

8月にあった「フィルムデーズ2022 映画でつながる、ヨーロッパ」で、エマニュエル・ムレ監督の『言葉と行動』(2020年、122分、カラー、Blu-ray、フランス語、日本語字幕)を鑑賞する。 出演は、カメリア・ジョルダナ、ニールス・シュネデール、…

なまなまと枝もがれたる柘榴かな

ザクロの実が色づく季節になった。ザクロの実が鈴なりである。触ると実は硬かった。熟すと実が裂ける。 ミソハギ科の落葉高木。葉は長楕円形。六月ごろ、筒形で多肉質の萼(がく)をもつ橙赤色の花をつける。果実は球形で、紫紅色に熟すと裂けて種子が現れる…

映画「虹の兵士たち」

インドネシア映画特集で、リリ・リザ監督の映画「虹の兵士たち」(2008年、インドネシア、125分、カラー、Blu-ray、日本語・英語字幕)を観る。The Rainbow Troops。 パンフレットより、 1974年、スマトラ島南部のブリトン島にあるムハマディヤ小…

汽車旅紀行2

関川夏央著『七つの海で泳ぎたい。』を読む。 「どうせ乗りかかった汽車じゃないか」「フランスへ行きたしとは思わず」の二篇から「どうせ乗りかかった汽車じゃないか」で、パリのオーステルリッツ駅から急行列車でボルドーのボルドー・サン・ジャン駅に到着…

夏の読書

朝は曇り、午後より晴れ上がる。最高気温32℃。街路樹のソヨゴの樹が小さな実を付けていた。《風がそよぐと音がする意、ソロバンの玉に利用。フクラシ。(もちのき科)》と名札あり。 モチノキ科の常緑低木。山地に自生。葉は楕円形で堅い。雌雄異株で、6月…

映画「リカルド・レイスの死の年」

「フィルムデーズ2022 映画でつながるヨーロッパ」映画祭の一本、ジョアン・ボテーリョ監督の映画「リカルド・レイスの死の年」(2020年、ポルトガル、132分、白黒・カラー Blu-ray)を鑑賞。 原題:O Ano da Morte de Ricardo Reis/The Year of …

汽車旅紀行

関川夏央著『七つの海で泳ぎたい。』を読む。 「思い出に生きる国」「どうせ乗りかかった汽車じゃないか」「フランスへ行きたしとは思わず」「第三のコリアン」の汽車旅紀行の中でも、「どうせ乗りかかった汽車じゃないか」「フランスへ行きたしとは思わず」…

ミランダ語

絶版になっている文庫本の関川夏央著『七つの海で泳ぎたい。』を読んだ。スリランカ、モルディヴ、マニラ、ルソンからミンダナオ、ジャワ、ポルトガル、イベリア半島、パリ、ブエノスアイレスからパラグアイ、リオ・デ・ジャネイロ、サンパウロ、吉林省延辺…

ジョージ・フィッツモーリス監督の映画『熱砂の舞』

夏の「活弁シアター」を映像文化ライブラリーで、ジョージ・フィッツモーリス監督の映画『熱砂の舞』(1926年、アメリカ、68分、白黒、Blu-ray、作品提供・マツダ映画社)を観ました。 活動写真弁士・佐々木亜希子さんの活弁による上映で、映画は砂漠…

シネマのある風景2

山田稔著『シネマのある風景』を読むと、パリのポルノ映画館街の近くに居たことがあるという。 パリのポルノ映画館といえば、マリー=クロード・トレユー監督の『シモーヌ・バルベス、あるいは淑徳』という映画がある。 「ディアゴナル特集」で上映されたマ…

シネマのある風景

《短編作家が自らの人生と重ね合わせ、心を寄せた映画の中の愛と孤独、青春と老いをそっと語る。》 山田稔著『シネマのある風景』を読む。山田さんは映画は映画館で観ることにしているので京都から大阪へ出かけて観ることもある映画館好きだ。『最後の読書』…

「ユリイカ」特集・田中泯

「ユリイカ」2月号の特集・田中泯。参照:http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3655 《私を使わない自由を踊る――田中泯と世界、その可傷性と偶有性》と題した松岡正剛と石井達朗の対談に注目した。 映画『名付けようのない踊り』に合わせた企画で…

聞き書き本を読む

古本マニアをめぐる聞き書き本を読む。南陀楼綾繁著『古本マニア採集帖』である。 《「本好きの生活史」のようなものが描けないかと漠然と考えたのです。》 目次 「古本と遊ぶ」「古本とコレクション」「古本で調べる」「古本と仕事」 36人への聞き書きで…

集英社のPR誌「青春と読書」の新連載

集英社の「青春と読書」4月号に「わたしの神聖なる女友だち」(四方田犬彦)というタイトルの新連載が始まっていました。 《男と女の間には友情はなりたつのだろうか。男は女のどこに学び、どこに敬意を抱きつつ、自分を造り上げていくのだろうか。花火のよ…

十薬を抜き捨てし香につきあたる

曇り、最高気温25℃。爽やかな風が吹く。ドクダミの花が咲いていました。葉を千切ると独特の匂いがしますね。葉の形がサツマイモの葉に似ています。 ドクダミ科の多年草。日陰の湿地に生え、高さ一五~三五センチ。全体に悪臭がある。葉は広卵形。夏、淡黄…

五木寛之を読む

快晴で爽やかな風が吹く。最高気温25℃。クルミ(胡桃)の実が大きくなって枝のあちこちに眺められた。クルミの実は小さなレモンのような形をしている。 《初夏の切れ味の良い陽射しが降りそそいでいた。》(五木寛之著「蒼ざめた馬を見よ」より引用) オニ…

イタリア書房のこと

曇り、最高気温24℃。爽やかな風が吹く。道端に黄色の花と白い綿毛のタンポポが眺められた。 3月下旬から映画館でヴィットリオ・デ・シーカ監督の映画「ひまわり」の上映がつづいている。ヘンリー・マンシーニの音楽。1970年に公開された作品である。h…

PR誌が届く

25日、最高気温25℃。気温が高くても湿度が低いので、とても過ごしやすい時期である。ツツジが満開で、今が見頃だ。 白水社のPR誌「白水社の本棚」2022年春号が届いた。 連載「愛書狂」(岡崎武志)を読む。「白水社の本棚」で最初に読むのがこのコラ…

たんぽぽの花には花の風生れ

新緑のきれいな季節。散歩の途中、ツツジやタンポポの花をあちこちに見つけた。立ち止まって花を観る。ふわふわした白い綿帽子は風が吹くと今にも空へ舞い上がりそうだ。ツツジの花に蜜蜂を見つけた。 「照影も殊に故郷の花の蔭」 「山櫻かざしし馬車をまた…

グランマ・モーゼス展

「グランマ・モーゼス展」を観に出かける。アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼスは70代で本格的に絵を描き始め、80歳の時にニューヨークで初個展を開いた。最初期から101歳で亡くなるまでに描いた作品から日本初公開を含む約130点の作品が公…

「波」4月号の表紙

新潮社のPR誌「波」4月号の表紙の写真が本を読んでいる津野海太郎さんの写真であった。背景にあるのが本棚である。背表紙が並んでいる。表紙に、 みんな 好きに 生きて 津野海太郎 という、津野さんの筆跡がある。 背景の本棚の本は津野さんの蔵書ではなか…

ミネアポリス美術館 日本絵画の名品展

全国各地を巡回している「ミネアポリス美術館 日本絵画の名品展」を観に行きました。アメリカの中西部ミネソタ州のミネアポリス美術館の所蔵する日本絵画のコレクションより選ばれた作品の展覧会です。写真撮影がOKでした。以下の写真は、画壇の革新者たちか…