立原道造の新刊から

 「ちくま」6月号の新刊案内で、立原道造著『僕はひとりで 夜がひろがる』に注目しました。

 《夢と郷愁を透明な言葉で歌った夭折の抒情詩人である立原道造。生前に発表したすべての詩と三篇の物語を、一冊に収めた決定版作品集。》

 森まゆみさんに『路上のポルトレ』という本があるのですが、副題が《憶いだす人びと》で、そのひとりが杉浦明平です。

 東京から豊橋に一泊して、渥美半島の杉浦明平を訪ねている。

 立原道造について、その風貌と交友時のエピソードを杉浦明平から聞き書きしています。

 森まゆみ『路上のポルトレ── 憶いだす人びと』 | 羽鳥書店 (hatorishoten.co.jp)

Amazon.co.jp: 立原道造詩集 (岩波文庫 緑 121-1) : 杉浦 明平: 本

 

杉浦明平の小説『泥芝居』

 先週、古本まつりにて、杉浦明平の小説を見つけた。

 福武文庫の一冊で、解説が、絓秀実(すがひでみ)。

 文庫の裏表紙に、

 《小半島の農地整理の歴史が一人の悪党を生んだ。悪党次郎さが土地ころがし、アサリ泥棒、町会議員選挙の買収、理不尽な訴訟などと八面六臂の大活躍。庶民の痛快無比な「悪」を通し、現代日本農村の退廃の縮図を描く悪漢小説(ピカレスクロマン)。》

 絓秀実(すがひでみ)の解説に注目しました。

『泥芝居』は、無条件に面白い小説である。この面白さは、近代文学がほとんど忘れてきたものだ。》と解説の冒頭で語り始め、この小説をつぎのように見立てている。

 

《このような本書の特色は、意外に、新しい世界文学の動向と接しているのである。フランスのヌーヴォー・ロマン以降、小説が行きづまり、それの持つ本来の「面白さ」が失なわれたとされた時、その忘れられた「面白さ」を復権するものとして、ガルシア・マルケスをはじめとするラテン・アメリカ文学がおおいにもてはやされたことがあったのは、記憶に新しい。

 ところで、杉浦明平の三つの知的源泉が絶妙に融合したこの『泥芝居』を見てみれば、これがラテン・アメリカ文学の出現とほぼ同じ文脈に置かれるべき作品だということが分かるだろう。とりわけ、マルケスは杉浦明平ときわめて似た相貌を示すのである。》256ページ

映画『金星ロケット発進す』

 知られざる東ドイツの名作「壁の向こうのハリウッド」

 デーファ80周年特集上映2026

 

 「壁の向こうのハリウッド」傑作選の一本

 『金星ロケット発進す』(1960年、94分、カラー、DCP、ポーランド合作)を鑑賞。

 監督・クルト・メーツィヒ。 

 《スタニワフ・レムの初めてのSF小説をポーランドと共同で映像化

 デーファ最初の「空想映画」。男性7名と日本人女医1名からなる国際的科学者チームが宇宙船に乗って金星の調査に出発する。金星に生命体は見当たらず、制御不能になった巨大な絶滅装置が存在し放射能を放出している。宇宙船は危機に瀕し、チームの3名が犠牲になるが、残りの乗組員は無事地球に戻る。日本でも1961年に公開され好評を博した。》(パンフレットより)

 

 乗組員の一人が谷洋子で、日本人女医を演じているのに注目した。

 この映画は、レトロ感のある宇宙冒険SF映画である。 

 ロシア・ソビエト映画のパーヴェル・クルシャンツェフ監督の映画『火を噴く惑星』(1961年)とこの作品も金星が舞台でよく似ている。

新刊案内から

 筑摩書房のPR誌「ちくま」5月号で、新刊案内を見ると、山本善行著『本の中の、ジャズの話。』があった。

 《京都の古書店、善行堂は文学と音楽でできている。古本屋の日常とジャズ喫茶とレコード屋巡りなどの日乗エッセイであり一風変わったジャズ本ガイド。》

 「ちくま」6月号を手に取ると、筆者が、『本の中の、ジャズの話。』について書いてるのだった。興味深く読んだ。

 「WAY OUT WEST」という無料の十七年ほど続いている月刊雑誌に、自由に書かせてもらっている、と云う。

 内容は、半分ぐらいが古本屋のことや読んだ本のこと、中古レコード店のこと、京都の街歩きの話などで、自分の古本屋生活の日記のようにも読めると書いている。

 本の中の、ジャズの話。 / 山本 善行【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア

 

〈DEFAアニメーション選集〉

 デーファ80周年 特集上映2026

 デーファ・アニメーション撮影スタジオが製作した短編9本を鑑賞。

 1957年から1990年までに、デーファで製作されたアニメーションの作品から選ばれた作品だ。

 

『青いネズミはどこにもいない』(1957年、クラウス・ゲオルギ監督、11分・DCP・カラー)

『対戦相手を倒すには』(1963年、ブルーノ・J・ベトゲ監督、5分・DCP・白黒)

『こんにちは、Hさん』(1965年、クラウス・ゲオルギ、カーチャ・ゲオルギ監督、14分・DCP・白黒)

『石器時代の話』(1965年、ヘルベルト・レヒナー監督、10分・DCP・カラー)

『伝説の鳥トゥリパンを探しに』(1976年、クルト・ヴァイラー監督、13分、DCP・カラー)

『ちょうちょのフリドリン』(1982年、ヘルゲ・ライベルク、アレクサンダー・ライマン監督、10分、DCP・カラー)

『カフカの夢』(1989年、ジークリンデ・ハーマッハー監督、8分、DCP・カラー)

『SITIS―扉―』(1989年、ライナー・シャーデ監督、11分、DCP・カラー)

『お隣さんたち』(1990年、ガボール・シュタイジンガ監督、5分、DCP・カラー)

 

『青いネズミはどこにもいない』は、ネズミの家族が列をなして街を散歩する。

『石器時代の話』は人形によるアニメーション作品。

『カフカの夢』と『SITIS―扉―』は、ベルリンの壁が崩壊した年に製作された作品で、その描写にベルリンの壁の崩壊を暗に想起させる。

映画『小さなムックの物語』

 DEFA80 

 知られざる東ドイツの名作「壁の向こうのハリウッド」

 デーファ80周年 特集上映2026

 

 第二次大戦後、1946年5月17日に、ソ連の協力を得て映画製作会社DEFA(デーファDeutsche Film-Aktiengesellschaftドイツ映画株式会社)が、設立された。

 《2026年は80周年の記念の年である。戦前のドイツ映画黄金期を築いたUFA(ウーファUniversum Film-Akitiengesellschaft)の巨大な撮影スタジオと高度な技術を引き継いで、1992年に最後の作品を公開するまで1000本以上の劇映画、約950本のアニメーション、3000本におよぶドキュメンタリー、約2500本のニュース映像を製作した。1990年東西ドイツ統一の前、デーファ社には約40名の監督、4000名を超える従業員が所属していた。デーファ映画のジャンル、内容の豊富さ、芸術性の高さは、まさに「壁の向こうのハリウッド」と呼ぶにふさわしい。》(パンフレットより)

 ヴォルフガング・シュタウテ監督のアラビアンナイト風のメルヘン映画、『小さなムックの物語』(1953年、100分、カラー、DCP)を鑑賞。

 《ヴィルヘルム・ハウフ作童話の映画化。中近東のある町に背中の曲がった小柄な老人が住んでいた。子供たちに馬鹿にされ追い払われるが、ある日彼らは老人の昔話に耳を傾け夢中になる。

 1200万人が映画館に足を運んだという伝説的作品。東ドイツの終焉まで輸出によって最も外貨を稼いだ映画である。》

 中近東のある町が舞台。背中が曲がった小柄な老人は、常日頃、街に出かけると、子供たちから追いかけられていた。それから逃れるため、老人は難を逃れるため子供たちの集団の追跡から町中を逃げ回るのが常であった。

 いつものように、子供たちに追いかけられ、逃げ場を失った老人は、子供たちに昔話を語り始めたのだった。

 めくるめくアラビアンナイト風なメルヘンの物語。

 冒頭の逃げ回るシーンに大きな象が現れて長い象の鼻が伸びて小柄な老人を鼻で巻き上げ象の背中へ押し上げるシーンに驚く。

 

映画『若い川の流れ』

 「広島ゆかりの映画・映画人」特集の一本。

 田坂具隆(ともたか)監督の映画『若い川の流れ』(1959年、日活、127分、白黒、35ミリ)を鑑賞。

 《昭和の人気作家・石坂洋次郎の原作による青春文芸路線の石原裕次郎主演作品。入社二年目の会社員・健助は、唐突に専務の娘・ふさ子と見合いをさせられるが、同僚・みさ子も気になる存在になっていく。結婚観が変わり始めた時代の若者たちの恋愛模様をユーモアを交えて描く。》(パンフレットより)

 造り酒屋の両親が健助の下宿に秋田から上京してくる。健助の父親が東野英治郎、母親が轟夕起子。東野英治郎と轟夕起子の両親のユーモラスな演技に注目した。

 専務(千田是也)の娘・ふさ子を芦川いづみが、のびのびとユーモラスに演じている。

 健助の同僚・みさ子(北原三枝)も健助に好意を抱いている。

 健助の大学の同級生で音楽家・室井(小高雄二)との四人による恋の鞘当て。

 ロマンチックでユーモアにあふれる作品。

若い川の流れ / 石坂 洋次郎【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア