『五月の読書』

 ふと『五月の読書』について書きたくなった。
 みすず書房の「みすず」1・2月合併号に2020年読書アンケートがあり、誰も挙げていなかった本で、高橋英夫著『五月の読書』という本です。単行本に未収録の原稿をまとめています。読後感は五月の青空のような爽やかな風の吹いている本でした。巻末に「引用に吹く風――高橋英夫頌」と題して堀江敏幸氏の解説があります。この『五月の読書』で、『ニヒルとは無縁な「文学の魂」』と題して後藤明生を論じ、「編集者ハヤシ・タップの金字塔」と題して林達夫を語り、磨かれた文章が心地よい名文です。
 《「きみの訳した、『ホモ・ルーデンス』だけど、校正刷が出たらハヤシ・タップに見て貰おうと思ってるんだよ」。粕谷一希は私にそう言った。四十年も昔のこと。彼の勧めで取組んだ遊びの文化論の翻訳だった。『中央公論』デスクだった彼は、顧問として時々中央公論社に姿を見せる林さんとも親しかったのだ。「こういうものを見てもらうのに最適な人だからね」。》
 《林さんのその多元的・多極的な歩みが広く認められるようになったのは、戦前すでに『文芸復興』『思想の運命』という魅力ある著書が刊行されていたとはいえ、やはり戦後になってからである。》

 

 

五月の読書

五月の読書

  • 作者:高橋 英夫
  • 発売日: 2020/04/25
  • メディア: 単行本
 

 

 

ホモ・ルーデンス (中公文庫プレミアム)

ホモ・ルーデンス (中公文庫プレミアム)

 

 

往きつ来つ目白遊べり二タ椿

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 最高気温14℃、日々暖かくなる。椿(ツバキ)が満開で見頃を迎えていました。赤い花、白い花とさまざまな種類のツバキの花が咲いています。つやつやした濃い緑色の葉で厚みがあります。

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 「又通る彼の女房や藪椿
 「目白来てゆする椿の玉雫
 「往きつ来つ目白遊べり二タ椿
 
 松本たかしの俳句です。メジロはツバキの花の蜜を吸う。花から花へ移動することでツバキの咲いている枝がゆれる。メジロが花から花へ移る。往きつ来つ、行ったり来たりとメジロがツバキをめぐって遊んでいるように作者には見えた。

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トマス・ピンチョンの『ブリーディング・エッジ』

 あちこちに梅の花が咲き出して近くを通るとほんのりと良い香りが漂って来る季節になりました。
 梅につづいて、桜もぽつぽつと咲き出していました。早咲きの桜で河津桜です。青空を背にして紅色の花びらが鮮やかです。 

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サクラの一品種。ヒカンザクラと早咲きオオシマザクラの自然交配種とみられ、静岡県河津町に多く自生する。二月ごろ、一重で淡紅色の花をつける。  『大辞泉』 

 『波』2月号の三月新刊予定を見ると、トマス・ピンチョンの『ブリーディング・エッジ』が出るようです。他に、養老孟司のパトリック・バーカムの『アナグマ国へ』という本の書評が興味深かった。
 《偶然だが、日本でも昨年十一月に東京大学出版会から金子弥生著『里山に暮らすアナグマたち』が出版された。そこまでアナグマに入れ込む人は少ないと思うが、両著を併読されると面白いと思う。》

 検索で調べると、トマス・ピンチョンの『ブリーディング・エッジ』の内容について木石岳さんがとても詳しく語られています。面白く視聴しました。

 参照:https://www.youtube.com/watch?v=CCRR0WcGvao

 

アナグマ国へ

アナグマ国へ

 

 

 

 

 

映画『スパイの妻』

 寒の戻りで、年末から正月の頃の気温へ再び戻った。朝の気温が氷点下。最高気温が5℃で晴れる。雪混じりの強い風が吹くなかを映画『スパイの妻』を観に出かけた。中高年の観客が多い。黒沢清監督の映画である。

 映画を観ながらエリック・ロメール監督の映画に『三重スパイ』という作品があるのだが、この作品のことを思い出していた。おそらくこの『三重スパイ』という作品を元に、すじや構想が練られたのではないだろうか。

 参照:エリック・ロメール監督の『三重スパイ』 - 栗カメの散歩漫歩 (hatenablog.com)

枇杷咲いて長き留守なる館かな

 先日、ビワの花が咲いていた。ビロード状のつぼみが割れて、小さな白い花びらが密集して咲いていました。地味な花で遠くから見るとあまり目立たない。葉は大きくてつやつやしています。

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バラ科の常緑高木。四国・九州の一部に自生し、高さ約一〇メートル。葉は大形の長楕円形で、表面はつやがあり、裏面に灰褐色の毛が密生。秋から冬、黄色がかった白い花を密につける。夏、倒卵形の実が黄橙色に熟し、食用とされる。  『大辞泉

 

 「枇杷咲いて長き留守なる館かな」松本たかしの俳句より。

 

 新潮社のPR誌『波』2月号の新刊案内に、松浦寿輝著『わたしが行ったさびしい町』という本が出るようです。《最高の旅とはさびしい旅にほかなるまい。》

 

わたしが行ったさびしい町

わたしが行ったさびしい町

  • 作者:松浦 寿輝
  • 発売日: 2021/02/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

片岡一郎『活動写真弁史』

 みすず書房の「みすず」1・2月合併号を手に取って見る。2020年読書アンケートで毎年恒例になっている。映画本で岡田秀則氏が、ケヴィン・ブラウンロウ『サイレント映画の黄金時代』(国書刊行会)を挙げていた。
 そして《無声映画といえば、二〇二〇年は片岡一郎『活動写真弁史』(共和国)の出版も快挙だった。》とコメント。
 この『活動写真弁史』は、週刊読書人の年末恒例のアンケート特集「二〇二〇年の収穫」で佐久間文子氏が興味深く読んだ、と挙げていた注目の本だった。
 1月に周防正行監督の『カツベン』と10月に小津安二郎監督の『東京の女』(1933年)を澤登翠さんの活弁で観て、カツベンに興味を深めた年だった。11月のレイ・C・スモールウッド監督の『椿姫』(1921年)は活動弁士佐々木亜希子さんによる活弁シアターだったが、見られず残念。「みすず」2020年読書アンケートに、もう一人この片岡一郎の本を挙げていたのが武藤康史氏で、《昔の語り芸のことから説き起こし、初期映画史を駆け抜け、「トーキー時代とその後の弁士たち」(最終章の題)にまで説き及ぶ、現役の活動写真弁士でもある若き著者による労作。》とありとても参考になった。

 

活動写真弁史: 映画に魂を吹き込む人びと

活動写真弁史: 映画に魂を吹き込む人びと

 

 

 

サイレント映画の黄金時代

サイレント映画の黄金時代

 

 

写真と記憶、小説と旅

 新潮社のPR誌『波』2月号の石川直樹柴崎友香の対談「誰かにとって特別なことで、この世界はできている」を読む。

 石川直樹のエッセイ集『地上に星座をつくる』と柴崎友香の33の短編からなる小説集『百年と一日』をめぐるトークイベントを採録した対談である。1月30日のNHKラジオ番組で、「石丸謙二郎の山カフェ」のゲスト出演が石川直樹さんであった。

 《柴崎 小説も書いてみないとわからないので、山を登るのと近いところがあるような気がします。その時々で臨機応変に考えていくしかないところが。

 石川 そうですね。麓のベースキャンプでこのルートで登ろうとしても、いざ登ってみたら大きな岩があって迂回したり、行ってみないとわからないことばかりです。旅も同じで、A地点に行くつもりが、途中でBが面白いよと聞いて行き先を変更したり、気づいたらCに着いてたり・・・・・・。》

 

地上に星座をつくる

地上に星座をつくる

 

 

 

百年と一日

百年と一日