聞き書き本を読む

古本マニアをめぐる聞き書き本を読む。
南陀楼綾繁著『古本マニア採集帖』である。
 《「本好きの生活史」のようなものが描けないかと漠然と考えたのです。》

 

 目次

「古本と遊ぶ」
「古本とコレクション」
「古本で調べる」
「古本と仕事」

 36人への聞き書きです。

《ひとりの人生には紆余曲折があり、それを「古本」という観点でまとめるのには強引さが付きまとう。こんなまとめかたでいいのかと毎回悩みながら、おぼつかない手つきで採集した話を標本箱に収めた。(中略)本書を読んだ方に、古本マニアや古本屋という存在を、自分の隣にいるような人だと身近に感じてもらえたら、このうえなく嬉しい。(「はじめに」より)》

 三原宏元さん、猪熊良子さん、退屈男さんなどへの聞き書きを興味深く読んだ。
 退屈男さんのブログ「退屈男と本と街」についても語られている。その後は、Twitterに移行しているそうだ。 退屈男さんはPR誌を本屋で貰って読むのが好きという。
 南陀楼さんが《退屈男くんは、古本を通じて出会った大切な友人である。これからも。》と本書を締めくくっている。

 

 

集英社のPR誌「青春と読書」の新連載

 集英社の「青春と読書」4月号に「わたしの神聖なる女友だち」(四方田犬彦)というタイトルの新連載が始まっていました。

 《男と女の間には友情はなりたつのだろうか。男は女のどこに学び、どこに敬意を抱きつつ、自分を造り上げていくのだろうか。花火のような恋愛とはまったく違った形で、両者は純粋な信頼関係を生きることができるだろうか。
 わたしはこうした問いを前に、自分がこれまでに出逢った女性の友人たちのことを考えている。》(冒頭より引用)


 第一回・ガールスカウトの女の子。

 『遊女の文化史』の筆者・佐伯順子さんをめぐり、四方田さんの通っていた小学校が同じだったり、共にボーイスカウトガールスカウト活動を経験していたという体験談や、「親密感」の由来が何であるのか述べられている。その謎をめぐる話が興味深い。

 
 《わたしはここで文化研究家としての佐伯順子を論じたいわけではない。わたしの目下の関心事は、わたしが彼女に感じる親密感がいったい何に由来していたのだろうということである。
 あるとき謎が解けた。何かの話の途中で、わたしたちが同じ小学校の出身であることが判明したのである。えーっ、まさかあ? そういえばどことなく順子さんの話ぶりには、わたしが幼い頃から聞き親しんでいた、阪急沿線の大阪弁の響きがある。なんだ、そうだったのかあ。それ以来、彼女はわたしのことを「先輩」と呼ぶようになった。なんだか不思議でおかしい。》14ページ

 筆者の幼い頃から親しんでいた阪急沿線の大阪弁に親密感の由来があったというのですね。

 参照:http://seidoku.shueisha.co.jp/2204/index.html

 

 

 

十薬を抜き捨てし香につきあたる

 曇り、最高気温25℃。爽やかな風が吹く。ドクダミの花が咲いていました。葉を千切ると独特の匂いがしますね。葉の形がサツマイモの葉に似ています。

ドクダミ科の多年草。日陰の湿地に生え、高さ一五~三五センチ。全体に悪臭がある。葉は広卵形。夏、淡黄色の小花を穂状につけ、その基部に白い苞(ほう)が十字形につき、花びらのように見える。整腸・解毒・利尿などの民間薬として用いる。十薬(じゅうやく)。  『大辞泉

 

 中村汀女の俳句に、「十薬を抜き捨てし香につきあたる」という句があります。昭和十五年(1940年)の句です。枯れている庭のドクダミを見つけ、抜き捨てようとした時に独特の匂いがしたよ。香につきあたるという表現に注目しました。

 

五木寛之を読む

 快晴で爽やかな風が吹く。最高気温25℃。クルミ(胡桃)の実が大きくなって枝のあちこちに眺められた。クルミの実は小さなレモンのような形をしている。

 《初夏の切れ味の良い陽射しが降りそそいでいた。》(五木寛之著「蒼ざめた馬を見よ」より引用)

オニグルミの果実。また、クルミクルミ属の落葉高木のオニグルミ・テウチグルミなどの総称。果実は丸く、肉質の外果皮と堅い内果皮に包まれた子葉部分を食用にする。  大辞泉

 五木寛之著『心が挫(くじ)けそうになった日に』(新潮文庫)は高校生と行われた対話が2つ、早稲田大学で行われた対話が1つ収められている。平成三十年七月新潮社より刊行された、『七〇歳年下の君たちへ 心が挫けそうになった日に』を改題している。

 《自分のルーツと力ずくで切り離され、あるいは自分のふるさとから追放されて、ただただ異国を放浪する。それはまさに現代を生きる人間の姿じゃないか。僕は「デラシネ」という言葉を、簡単に言えば「難民」と解釈して、小説『デラシネの旗』を書いたのです。

 現在ならデラシネを「難民」と訳してもいいでしょう。五月革命から半世紀が経(た)ったけれど、今まさにデラシネの時代ですよね。生まれ育った国土と深いつながりを持ちながら、土地を奪われ、土地を追われ、強制的に移住させられる人々。かつてスターリンの政策のもとでバルト三国ウクライナコーカサス地方などから無数の人びとがシベリアや中央アジアへ送られました。今なおクリミア、ウクライナのあたりはきな臭いでしょう? また、シリアからの難民はヨーロッパ中で問題になっていますよね。世界各地のありとあらゆるところで、力づくの人間の移動が行われ、根こぎにされた人びとがたくさん生まれています。この何十年もの間、フランスのアルメニア系移民の子であり、現代最高のシャンソン歌手でもあるシャルル・アズナブールはじめ、いろんな歌手が難民たちの悲痛な思いを歌に託して歌ってきました。今ようやくその問題が世界的に顕在化してきたな、という気がしています。

 難民とはつまりデラシネであり、今はデラシネの時代、二十一世紀はデラシネの世紀だという実感が僕にはあるんです。》 20~21ページ

 

 

 

 

イタリア書房のこと

 曇り、最高気温24℃。爽やかな風が吹く。道端に黄色の花と白い綿毛のタンポポが眺められた。

 3月下旬から映画館でヴィットリオ・デ・シーカ監督の映画「ひまわり」の上映がつづいている。ヘンリー・マンシーニの音楽。1970年に公開された作品である。
https://www.youtube.com/watch?v=pB9kRVsU-xg

 先日、森まゆみ著「昭和・東京・食べある記」(朝日新書)を読んだ。東京の食べ物屋さん訪問記である。喫茶店、レストラン、老舗の創業期から現在までの話では創業者の話が興味深かった。
 そのイタリア料理店「文流」について、会長の西村暢夫(のぶお)さんへ森さんが聞き書きをしている箇所に注目しました。

 一部を抜き書きしてみると、


 

6、高田馬場駅前のイタリア料理店「文流」、日伊文化交流を願って生まれた店。
 

 まずは神田神保町に「イタリア書房」を開いた。小学館に働きかけて『伊和中辞典』を完成させる。 162ページ


 イタリアは土地土地で料理がちがう。そしてその料理にぴったりの地ワインがあります。

 


 
 そういえば、田之倉稔著『林達夫・回想のイタリア旅行』の版元がイタリア書房ですね。

 

 

 

PR誌が届く

 25日、最高気温25℃。気温が高くても湿度が低いので、とても過ごしやすい時期である。ツツジが満開で、今が見頃だ。

 白水社のPR誌「白水社の本棚」2022年春号が届いた。

 連載「愛書狂」(岡崎武志)を読む。「白水社の本棚」で最初に読むのがこのコラム。

 出版業界の三〇年に渡る変化を肌で感じてきた岡崎武志さんが感慨を込めながら語っている。ほんの一部を引用してみる。

 《二〇〇〇年に入ったあたりから顕著になったのは、私が知らない書き手が増えたこと。小出版社の健闘が目立つこと。そして、函(箱)入りの本が減ったことが挙げられる。全集類は別として珍しくなった。》

 《若い人に函入りの本を見せたら、見たのは初めてと驚いていた。コストがかかるのが最大の理由だろう。》

たんぽぽの花には花の風生れ


 新緑のきれいな季節。散歩の途中、ツツジタンポポの花をあちこちに見つけた。立ち止まって花を観る。ふわふわした白い綿帽子は風が吹くと今にも空へ舞い上がりそうだ。ツツジの花に蜜蜂を見つけた。

 

 「照影も殊に故郷の花の蔭」
 「山櫻かざしし馬車をまた抜きし」
 「たんぽぽや忽ち蜂の影よぎり」
 「たんぽぽの花には花の風生れ」

 

 中村汀女の俳句で、昭和二十一年(1946年)の句です。
 この四句の前に、《「阿蘇」主催水竹居忌に参ず》の前書きがある。
 汀女はこの年、三月、熊本へ帰郷する。月餘滞在。