映画『シモーヌ・バルベス、あるいは淑徳』とポール・ヴェッキアリ

映画『シモーヌ・バルベス、あるいは淑

 広島国際映画祭2016「ディアゴナル特集」が、映像文化ライブラリーで11日から13日まで開催される。

 11日、夜の部のマリー=クロード・トレユー監督の映画『シモーヌ・バルベス、あるいは淑徳』(1980年、フランス、80分、カラー、35ミリ、日本語字幕)を観る。


 上映前に、特別ゲストとしてポール・ヴェッキアリ監督がステージに上がり、「ディアゴナル」とはどういうものであったのかをフランス語で語った。日本語通訳付きで聴く。
 「ディアゴナル」という名前の映画製作会社をヴェッキアリは設立した。
 フランス語で「対角線」を意味する言葉で、ジャン=リュック・ゴダールフランソワ・トリュフォーらのヌーヴェルヴァーグに対抗する思いをこめて決めたという。
 映画批評誌『カイエ・デュ・シネマ』の批評家であったポール・ヴェッキアリは、大手の映画製作会社に頼ることなく、どこからの援助金もなく自由な映画製作を目指して「対角線」つまり「ディアゴナル」という自主制作会社を設立して映画製作を開始した。
 資金的にも商業的にも苦難の道を歩むことになったが、「ディアゴナル」に集まったメンバーは、批評家出身が多く、製作にそれぞれの一家言を持つので、映画製作の現場で問題はあったが、それも今は楽しい思い出になっている。

 ポール・ヴェッキアリ氏が退場してから館内が暗くなり『シモーヌ・バルベス、あるいは淑徳』の上映がはじまった。


 出演は、イングリッド・ブルゴワン、マルティーヌ・シモネ、ミシェル・ドラーエ。


 ポルノ映画館で案内係として働くシモーヌ・バルベスの、ある夜の出来事。仕事を終えたシモーヌはナイトクラブに行き、その店では従業員が撃たれるというハプニングが起きる。店を出て夜の街を歩くシモーヌに、車に乗った男が声をかけるが・・・。(特集パンフレットより)


 冒頭、ポルノ映画館で案内係で働くシモーヌイングリッド・ブルゴワン)は、同僚のマルティーヌ(マルティーヌ・シモネ)の出勤が遅れて来たのを面と向かって悪態をつくのだった。シモーヌは小柄で、マルティーヌは長身でふたりは次から次と映画を観に来る客(様々な客がやって来る)を手際よく案内していく。
 シモーヌとマルティーヌは客を待っている間に途切れることなくお喋りに興じている。客が来るたびに中断して席へ案内して行く。
 終幕したポルノ映画館からの帰路、シモーヌイングリッド・ブルゴワン)はナイトクラブに立ち寄る。女友達が働いているので、待って一緒に帰ろうとしたのだが、従業員の男が女に撃たれて殺される突発事件が起こった。
 騒然とするナイトクラブを一人後にしたシモーヌは帰路へついた。
 深夜の道路を歩く彼女に後ろから車が近づいて来た。
 運転席から男が、家へ送るから乗れと誘う。
 断わってもまだついて来る。
 諦めないので、シモーヌは逆にわたしが貴方(あなた)を送ってあげようと運転席に乗り込んだ。
 自分で男の車を運転し始めた。唖然とする男。
 深夜、開いている店があればそこで飲もうと思ったが、どこも閉まっていて見つからない。
 車は深夜の街をただ走る。
 男はベルギー人で、シモーヌは虚(うつ)ろな感情のままに運転しながら夜明けまで走りつづけるのだった。 

 
 参照:「広島国際映画祭」http://hiff.jp/archives/2890/
    「ポール・ヴェッキアリ」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%82%AD%E3%82%A2%E3%83%AA

       「ディアゴナル特集」ポスター