世界の8大文学賞

 「世界の8大文学賞」を読む。
 副題が、「受賞作から読み解く現代小説の今」。
 『きっとあなたは、あの本が好き。』、『読んで、訳して、語り合う。』と同じく立東舎からの本である。

 ノーベル文学賞を、都甲幸治、中村和恵、宮下遼。
 芥川賞を、都甲幸治、武田将明、瀧井朝世。
 直木賞を、都甲幸治、宮下遼、石井千湖。
 ブッカー賞を、都甲幸治、武田将明、江南亜美子。
 ゴンクール賞を、都甲幸治、藤野可織、桑田光平。
 ピュリツァー賞を、都甲幸治、藤井光、谷崎由依
 カフカ賞を、都甲幸治、阿部賢一、石井千湖。
 エルサレム賞を、都甲幸治、阿部公彦、倉本さおり。

 以上の三人による座談会である。

 世界の文学賞と日本の文学賞の受賞作と作家をめぐって熱く語る三人の談話が、外山滋比古の「三人会」のすすめを思い出した。
 三人寄れば文殊の知恵であろうか。座談会あるいは乱談(外山滋比古の造語)の妙であろうか。
 作品の背景について、出席者が非常に細かいところまで熱く語り、その見立てが面白く、なるほどと思わせる見解が聞けるのだった。司会役が都甲幸治さん。
 話題になった作家でアリス・マンロー小野正嗣車谷長吉のエピソードに注目する。
 先月(5月)のNHKラジオの番組で松浦寿輝の「ミュージック・イン・ブック」は、ゲストが小野正嗣さんだった。*1
 

 都甲 文化人類学者って、昔は大体アメリカやフランスなど先進国の出身で、未開地域に研究に行ってましたけど、今はインドネシアなど発展途上国の出身で、アメリカなどで教育を受けたあと自分の国に戻って、自国について研究する人も多いんですよね。「九年前の祈り」って、それに近い気がするんです。浦の人の視点と、フランスから浦を観察している人の視点が一つに重なっている。  57ページ

世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今 (立東舎)

世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今 (立東舎)

 

*1:ラジオで初めて小野正嗣さんの声を聞いた。