鶴見俊輔 混沌の哲学

 岩波書店のPR誌「図書」8月号を書店で頂く。

 今月号の巻頭の「読む人・書く人・作る人」で、「私の伯父さん」(高草木光一)を読んだ。

 新刊の『鶴見俊輔  混沌の哲学――アカデミズムを超えて』という本の著者である。「私の伯父さん」で筆者は、母方の伯父について書いている。

 一部引用すると、

 戦時中は徴兵されたものの、しばしば激しい神経痛の発作に見舞われ、多くの時間をベッドの上で過ごした。戦闘には一度も加わらなかった。神経痛は、今は知らず、当時は他覚的な検査方法がなく、医師は患者の主訴に従うほかなかった。敗戦後に病は突如寛解し、山ほどの物資を背負って帰って来た。

 

 

伯父は、終生「変人」として生きた。誰からも尊敬されることはなかった。しかし、鶴見のデモクラシー論を読み解いていくと、依怙地(えこじ)に自分のスタイルを守り通した伯父が、意外にも未来に向けて意味ある存在のように思えてくる。鶴見を通して、これまで慣れ親しんでいた風景が様変わりして見えてきた。