家城巳代治監督の映画『姉妹』

 
 昨年の5月に亡くなられた新藤兼人監督の「特集・新藤兼人のシナリオ」と題して脚本を手がけた作品を映像文化ライブラリーで上映している。
 9日、家城巳代治監督の映画『姉妹』(1955年、中央映画、100分、白黒)を観た。
 出演は野添ひとみ中原ひとみ望月優子内藤武敏、川崎弘子、多々良純加藤嘉北林谷栄殿山泰司
 6月プログラムより引用。 

毎日出版文化賞を受賞した畔柳二美の同名小説を、新藤兼人家城巳代治が脚色。しっかりものの姉・圭子、快活な妹・俊子。山奥の両親のもとを離れ、伯母の家に下宿して学校に通う2人の姉妹。周囲の人々とのふれあいと2人の成長をほのぼのと描く。

 
 野添ひとみ中原ひとみの演じる姉妹は、山奥の水力発電所がある山村から、都会に住む伯母夫婦を頼って下宿させてもらい、女子高と女子中学校に通っている。
 背後に城が見られる堀端を並んで二人が歩くシーンがあるのだが、ロケ地に信州松本を選んでいるようだ。

 伯母の夫は大工の親方で、芸者遊びを姉妹に見られたり家で花札賭博(?)で警察に捕まってしまう。
 とんでもない事件を身近に経験して成長してゆく。
 
 借金取りが伯母の家にやって来た時に、伯母(望月優子)が姉の圭子(野添ひとみ)に居留守を頼んだ。だが、丁度戻ってきた妹の俊子(中原ひとみ)が事情を知らないで正直に伯母が居ると告げてしまった。居留守がばれてばつが悪い伯母と圭子の二人。

 そのあと伯母の夫の甥の警察官が近くに赴任してきたと訪ねて来た。
 四人がちゃぶ台を囲んで談話している。
 彼は石田三成という名前で、兄弟家族の名前が、秀吉、家康、信長だという。館内に笑い声。
 俄然、映画が面白くなって来る。
 畔柳二美の小説がそのようになっているのだろうか。
 明治45年生れの畔柳二美新藤兼人も明治45年生まれ。
 家城巳代治が明治44年生まれ。

 学友、近所の人にも積極的に交わっていく果敢な性格の俊子、控えめで優しい圭子は、時に対立することもあるが二人は情愛豊かに助け合い下宿生活を過ごしている。
 
 山村でも都市でも貧富の差や障害や病気、夫からの暴力に悩む者との出会いで手助けしようとする。だが現実はままならない。
 映画は社会の矛盾を声高ではなくしっかり伝えている。

 学校休暇にはボンネットバスで山奥の水力発電所のある村に帰郷する。
 発電所で働く父(内藤武敏)、母(川崎弘子)、まだ小さい弟が三人もいる七人家族。
 慎ましくも家族の絆を大事にし謙虚に暮らしている。
 そんな日々に、発電所で働く人が川に流されて亡くなる事故で、俊子の修学旅行を取りやめた。
 不幸に見舞われた家族に父が気遣ったのだ。俊子は我慢して納得し、旅行には参加しなかった。
 正月休みを父の会社の人たちや近所の人たちを呼んでカルタ取りや凧揚げといった遊びを楽しむ。
 ラストの姉の結婚による旅立ちと妹との別れ、妹が見送る場面が印象的だ。

 今回は、事前に「本はねころんで」で、原作者の畔柳二美さんについて知ることができた。
 参照:http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20130610