半七捕物帳を歩く

 また寒気団が南下を始めているようだ。昼間は晴れて青空で陽射しは暖かかったが、風が冷たかった。そういえば今日は小寒である。うーむ。まるで大寒のような冷え込み方である。夕方、南西の空に三日月を見た。
 田村隆一の『ぼくの東京』(徳間文庫)は、「東京の新開地、大正十二年の時点で云えば、北豊島郡巣鴨村字平松、昭和五年あたりに東京にやっと吸収された大塚村で生れて、三十五歳までその土地でブラブラしていたから、ほんとうの東京、江戸の下町も山ノ手も、正直なところ、ぼくにはまったく分からないのだ。」という田村隆一が、岡本綺堂の名作『半七捕物帳』を手がかりに、「旧幕の江戸、震災前の東京、そして戦後の東京」を歩いた「東京論」とも言える本だ。種村季弘の『江戸東京《奇想》徘徊記』(朝日新聞社)にもどこか似ているような感じがする。
 小林信彦の『私説東京繁昌記』(新版私説東京繁昌記)では、写真を荒木経惟がブラウベルマキナW67で撮っている。写真家の荒木さんと一緒に歩いて取材している。
 田村隆一のほうは、写真家の高梨豊と一緒に歩いている。その高梨さんを「高梨親分」と名づけて文章に登場させていた。