ジュリアン・シュナーベルの『潜水服は蝶の夢を見る』

 2月の下旬から、シネツイン1で日仏交流150周年記念「フランスシネマ・フェスティバル」と称して、フランス映画を上映している。
 夕方、その中から最終上映時間で、ジュリアン・シュナーベル監督の映画『潜水服は蝶の夢を見る』を観た。観客は思ったより少なく二十数人。
 ファッション誌「ELLE」の編集長だった男が、脳梗塞で全身が動かなくなって、左の眼とまぶたが動かせるのみとなった。リハビリに言語療法士の女性が、フランス語のアルファベットが書かれたボードを読み上げて、まぶたをウインクすることで、文字を一文字づつ選ぶというやりかたで、コミュニケーションを取れるように訓練する。
 このシーンが、男の眼の側から見える映像で表現されている。
 どのようにして撮影したのか、まるで自分が全身が動かなくなった男であるかのように感じさせる映画だ。
 眼をウインクさせながら、そうしたやり方で男は人生を振り返り、自伝的な本を書き上げて出版する。
 それが、ファッション誌「ELLE」の編集長だったジャン=ドミニク・ボビーの自伝『潜水服は蝶の夢を見る』という本だ。
 だが、彼は出版後まもなく亡くなる。うーむ。重い内容の映画だったが、主人公の「身体は潜水服を着たように重くてもぼくの想像力と記憶は蝶のように自由に羽ばたく。」という言葉には救われたような気持ちになった。
 映画館へ行く前に、K古書店の店頭棚から三隅治雄『さすらい人の芸能史』1974年(NHKブックス)を購入。
 シネツインは床暖房なのでとても快適に見れる。