「石の来歴」と「三つ目の鯰」

タチアオイの花

 背丈の高いタチアオイが大きな花で咲いている。紅・白・淡紅と鮮やかだ。
 13日の深夜に、小惑星イトカワの砂などが入っている可能性のあるカプセルを持った探査機はやぶさが地球に帰還する。
 10日の朝日新聞の「天声人語」に、奥泉光の「石の来歴」の冒頭の一行が引用されていた。
 例の、「河原の石ひとつにも宇宙の全過程が刻印されている。」である。
 宇宙の小惑星に着陸して、その小惑星から「石」を採取して地球に持ち帰る探査機はやぶさをめぐる「天声人語」だった。
 この夜、NHKの「クローズアップ現代」で、「傷だらけの帰還 探査機はやぶさの大航海」というタイトルの番組をやっていたので観た。
参照:「はやぶさhttp://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hayabusa/

 新潮社の季刊誌『考える人』2010年春号は、特集「はじめて読む聖書」。
 この季刊誌の特集を見て、ふと思ったのが奥泉光の本『石の来歴』に所収の二篇のうち、「三つ目の鯰」という作品のことだった。
冒頭、語り手の「ぼく」(サトル)が北に鳥海山、東に月山を望む、庄内平野のほぼ中央にある集落の共同墓地にある墓に父の遺灰を蒔く場面から始まる。サトルの父は長男で、次男がマモル、三男がワタル。
 語り手のサトルと職業牧師になったワタルおじさんとのあいだで、サトルの父のキリスト教信仰と棄教をめぐる談話が展開される。ふと、「三つ目の鯰」を思ったのは、そのことが記憶にあったためらしい。