『映画女優 若尾文子』

枇杷(びわ)

 6月6日は、二十四節気のひとつ芒種(ぼうしゅ)であった。
 太陽暦では六月六日ごろ。芒(のぎ)のあるイネを植える時期という意味から来ているようだ。 
 そういえば、今年の壬生の花田植えが六日だった。テレビのニュースで見た。
 梅雨を前にして梅の木の実が大きくなっている。枇杷びわ)の木も実が鈴なりで、それぞれの実がほんのりと色付き始めていた。

 四方田犬彦斉藤綾子編著『映画女優 若尾文子』(みすず書房)を読みつづける。
 ほぼ一六〇本近い数に出演した映画の「若尾文子フィルモグラフィー」が59ページある。
 タイトル・映画会社名・封切日・原作・脚本・監督・撮影・出演・役名(役柄)・モノクロorカラー・上映時間・解説。志村三代子・作成。
 本書の前口上を四方田犬彦。前半、「欲望と民主主義」と題して四方田犬彦が、後半を「女優は抵抗する」と題して斉藤綾子が論じている。
 二〇〇二年九月二六日の「若尾文子インタビュー 自分以外の人間になりたい」と題した聞き手の四方田犬彦斉藤綾子によるインタビューが収録されている。
 このインタビューで、映画界に入る前の話から、長谷川一夫、のちに大映で女優になってからの溝口健二小津安二郎増村保造宮川一夫三島由紀夫といった人物が語られているのを、興味深く読む。
 あとがきに、斉藤綾子は《志村三代子のフィルモグラフィーが、そして四方田と私の論文が、そうした映画女優若尾文子の仕事の重みと彼女の魅力に少しでも近づくことができたら、著者としては望外の幸せである。さらには、本書が、これから書かれるべく未来の女優論へと続いていけば、これほど嬉しいことはない。スターや役者の存在がなかったら、映画史はこれほどの魅力を誇ることはできなかっただろうから。》  343ページ

映画女優 若尾文子

映画女優 若尾文子