山寺の扉に雲あそぶ彼岸かな


 ハクモクレンが春風に吹かれ満開になっている。
 青空と白い花弁(はなびら)が目に鮮やかだ。
 先日、古本交差点に寄る。店内に善行堂、岡崎武志堂がある。
 店頭の箱から『飯田蛇笏句集』を買った。昭和三十三年七版発行。
 初版は昭和二十七年三月。角川文庫で山本健吉編。

 「山寺の扉に雲あそぶ彼岸かな
 飯田蛇笏の俳句で、大正五年の句である。
 もう一句、昭和八年の句に、
 「お彼岸の鐘ききとむる樵夫かな
 山林の木を切り出している山村で、お彼岸に寺の鐘の音が木こりに聞こえて来るよ。