映画「イゴールの約束」

映画「イゴールの約束」

 今月(8月)は、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督特集が映像文化ライブラリーで上映された。

 5作品連続でカンヌ国際映画祭の主要賞を受賞するなど世界中で高い評価を受けるベルギーの巨匠、ダルデンヌ兄弟。今回の特集では、貧しく孤独な少女の一途な生き方をドキュメンタリータッチで描いた「ロゼッタ」、お金や命の価値を知らずに生きる若者の日常とその心の移ろいを描いた「ある子供」、犯罪に関わった女性の心に芽生える変化を描いた「ロルナの祈り」など、6作品を上映します。ぜひご鑑賞ください。(特集パンフレットより。)
 20日、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の映画『イゴールの約束』(1996年、ベルギー、フランス、ルクセンブルクチュニジア、93分、カラー)を観る。
 出演は、ジェレミー・レニエ、オリヴィエ・グルメ、アシタ・ウエドラオゴ。

 

外国人違法労働者の売買をする父を助けながら、自動車修理工場で働くイゴール。ある日、労働者の1人が事故を起こし、死んでしまう。父はイゴールに手伝わせて遺体を埋めるが・・・。父に服従していた少年が精神的に自立していく姿を描く。

 ベルギーのリエージュ(?)を舞台にした映画で、イゴール(ジェレミー・レニエ)の父親ロジェ(オリヴィエ・グルメ)は外国人の違法労働者を売買してアパートに住まわせて、建設現場への派遣業をしている。
 新しくアフリカのチュニジア人アミドゥ(ラスマネ・ウエドラオゴ)がやって来た。建設現場で違法にアミドゥらは働いていた。
 ある日、アミドゥの妻アシタ(アシタ・ウエドラオゴ)が赤ん坊を抱えてやって来た。
 そうしたある日のこと、国の違法労働を取り締まる検査官が調査に建設現場へやって来る。
 労働者へ一時身を隠せと命令したロジェだったが、アミドゥは階段を踏み外して墜落死してしまう。
 亡くなる前に、イゴールへアミドゥは妻への遺言を伝えたのだったが、父親のロジェはイゴールがアミドゥから受け取ったアミドゥの妻アシタへ知らせる約束を無視して、事態をもみ消そうとした。ロジェとイゴールの父子はアミドゥを二人で埋めて隠した。
 残された妻のアシタへロジェは彼はまだ生きていると嘘の情報を流し、事故を隠蔽しようするのだったが・・・。
 約束を反故にされた息子イゴールは、父の行為と自分も埋葬に加わったということと、乳飲み子を抱えたアミドゥの妻アシタへまだ生きていると言って、だましていることの自責の念から激しい葛藤におちいるのだった。
 ドキュメンタリー・タッチで撮影されている。父と息子の葛藤で、父親役のオリヴィエ・グルメの演技が印象的だ。
 ラストは、暗示的に余韻を残して終わる。地味だけれど、深い味わいのある映画だ。