船影がつつじの上にふとくなる

ツツジの花

 ツツジの花がひっそり咲いていた。


 「船影がつつじの上にふとくなる
 「一株のつつじ隠れの船もあり
 「夏の蝶池の面に死ぬ水輪かな


 中村汀女の俳句で、昭和八年(1933年)の句です。
 前書きは、「野毛山初夏 三句」とある。
 昭和七年夏より中村汀女は大阪から横浜へ来た。
 西戸部の税関官舎から野毛山が近くて、夕刻までの小閑をよくひとりででかけた、という。
 小閑とは、すこしのあいた時間。
 「汀女句集」の「港」の前書きの一節に、

 横浜の町はどこからも船が見え、私は船のある港の風景が好きだった。