水鳥も見えぬ江わたる寒さ哉

ヒドリガモ

 川を渡っていると海鵜やヒドリガモを見かける。海鵜は潜っては浮びを繰り返している。ヒドリガモは岸辺に群れて、浅瀬の海苔をついばんでいるようだ。
 蕪村の句に、「水鳥も見えぬ江わたる寒さ哉」。安永六年の句である。
 今週手に入れた岩波書店編集部編『エッセイの贈りもの2』1999年(岩波書店)は、1961年から1970年にかけて、PR誌『図書』に掲載されたエッセイからの選集である。
 杉本秀太郎の「京都の書き手たちのこと」という解説が巻末にある。
 本文から「図書」1965年6月に掲載された多田道太郎の「無償語学の快」を読んだ。この文は、『物くさ太郎の空想力』1980年(角川文庫)にも所収されていて、「語学趣味」という題になっている。
 この二つの文を読み比べてみた。すると、かなり表記に異同がある。文庫版には、最後の行にある「無償語学はやはり無償として終らせるべきである。」がなかったが、文庫版の文章の方が良いかな。
エッセイの贈りもの―『図書』1938-1998 (2)