ある「写真」のこと

イチゴ

 イチゴの花が開く。
 伊藤俊治港千尋編『映像人類学の冒険』(せりか書房)に所収の討論「映像人類学の可能性」を読んで興味深かった。
 先日のアラン・レネ監督の『ヒロシマ・モナムール』で、1958年のロケの合間に主演女優エマニュエル・リヴァさんや監督らの撮影した広島の写真約500枚がパリにあることを港千尋さんが確認したという、17日の朝日新聞の記事があったが、この討論の一人に港さんも加わって話しているのだった。
 アウシュヴィッツの映像をめぐってで、宇野邦一アラン・レネの『夜と霧』を挙げたところ、今福龍太が丸山眞男が広島の原爆直後に撮った写真について語っている。

 今福 少し位相は違いますが、最近、丸山真男ヒロシマの原爆直後に撮った写真を見たんです。丸山真男は広島の宇品にあった陸軍参謀部の情報班に配属されていたわけですが、八月六日に被爆して、命はとりとめ、その三日後に軍属のカメラマンとともに市内に入って写真を撮ったわけです。彼はその写真の存在を誰にも知らせることなく、戦後の膨大な著述を行ってゆく。その映像については、彼の仕事のなかで一切言及されなかった。
 丸山の歴史意識の中に、調停できない映像リアリズムの産物としての広島の写真が、語られることなく封印されるようにして存在していたというのは、重大な意味を持っているような気もします。  77ページ

   
 うーむ。陸軍参謀部というところは、陸軍船舶司令部ですね。ところで、この写真だが、どこで見られるんだろうか。思わぬところで丸山眞男の写真の話が語られていた。
 なお、この本に、管啓次郎の「映像的ウォークアバウト」と中沢新一の「折口信夫のシネマ論的民俗学」あり。
 
注記、丸山眞男という名前は、引用文では丸山真男となっている。