ナーセル・ヘミール監督の映画『バーバ・アジーズ』

アラブ映画特集プログラム

 13日から始まっている「アラブ映画特集」の最終日19日、ナーセル・ヘミール監督の映画『バーバ・アジーズ』を映像文化ライブラリーで観る。
 冒頭の砂丘の光景。人の気配がない茫々とした砂漠が広がる。砂嵐の過ぎ去った後だろうか。砂の中から小さな女の子が這い出て来る。砂を払い退けている老人も登場する。
 二人は祖父とその孫娘で、砂漠を修道僧の集会へと参加するために、砂漠を歩いて行く道中なのだった。孫娘は可愛い赤い帽子をかぶっている。
 毎夜、野宿をして眠る前に祖父は孫娘から、昔話をしてちょうだいとお願いされる。
 では、昔話をしてあげよう。むかし、むかし、そのむかし・・・。祖父が語り出す。それは、いつのことか分からないがアラビアンナイトの物語で、ある王子さまの物語が展開される。
 また次の日も二人は砂漠を歩いて集会へと急ぐ。
 そして夜になると、王子さまの物語のつづきを祖父が孫娘に話すのだった。
 砂漠を歩いて行く道中で、弟を殺されたので犯人を追う男に二人は出会う。老人はその男に間違って犯人にみなされて乱暴されかけるが、誤解が分かり助かり、一緒に修道僧の集会へ向かう。
 この男の物語が、ある王子さまの物語に二重写し的に描かれる。砂丘の映像美が印象的である。老人と孫娘をめぐるめくるめくアラビアンナイトの世界を堪能した。
 最後に老人が死を迎える場面で『バーバ・アジーズ』は終わる。
 後には、茫々と砂丘が広がるばかりである。