桂文我を聴く3

 午後からも降ったり止んだり晴れ間も見える。夕方から本降りになった。
 前線が通過しているのか、テント地の屋根のようなものがある場所で雨宿りする。
 何人ものひとが集まってただ呆然と風と雨の降り続ける街路を見つめている。
 スウェーデンロイ・アンダーソン監督の映画『愛おしき隣人』に、雷雨で雨宿りをする人々の印象的なシーンがあったが・・・。
 CD『おやこ寄席ライブ9 桂文我』で「犬の目」、「くしゃみこうしゃく」、「牛ほめ」を聴いた。

おやこ寄席(9)

おやこ寄席(9)

 『新潮』2009年7月号の[文化月評]、「四方田犬彦の月に吠える」(十九)が面白い。
 読みながら、亡命者の在り方として、邱永漢を「二〇世紀の世界文学の中で日本への亡命者という点で、ナボコフとかジョイスとかそういう人間と比較すべきだと思います。」と垂水千恵と四方田との対談『越境のレッスン』で語っていたのを思い出した。
 「四方田犬彦の月に吠える」(十九)によると、筆者はパゾリーニの詩を翻訳しているが、パゾリーニの母の生れ故郷の土地の言葉とイタリア語で書かれた詩に難渋しているそうだ。
 筆者がパゾリーニについて加藤周一からうかがった話のエピソードなどがあって、にやりとする。
 このあたりは読者へのサービスかもしれない。
 『越境のレッスン』では邱永漢を、ナボコフとかジョイスとかそういう人間と比較すべきだと思いますと語っていた。 
 その伝で「四方田犬彦の月に吠える」(十九)では、映画監督パゾリーニのキリストをめぐる映画と、吉本隆明の「マチウ書試論」におけるキリストを比較論じているのだった。目からうろこ。風通しのいい話を聞いた気分である。
 終わりに田川建三氏の『新約聖書 訳と註』(作品社)の労作にふれて締めくくっているのだった。*1
 人間、褒(ほめ)られたら嬉しい。と桂文我の「牛ほめ」の話芸を楽しんだ。
 参照:田川建三訳著『新約聖書 訳と註』http://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/shinyakuseisho.htm

*1:注記:「マチウ書試論」のマチウ書は、マタイ福音書 のこと。フランス語の聖書から吉本氏が訳して。