映画『江戸っ子繁昌記』

江戸っ子繁昌記

 「名作映画 マキノ雅弘監督特集」から、マキノ雅弘監督『江戸っ子繁昌記』(1961年、東映、86分、カラー)を観に駆けつける。中高年の観客で満席に近い。映画繁昌記! 
 3月プログラムに、《江戸の魚屋・勝五郎の前に、旗本・青山播磨の屋敷に奉公に上がった妹・お菊(小林千登勢)の幽霊が現れる。お菊は将軍家拝領の皿を割ったかどで手討ちにされていた・・・。落語の『芝浜』と怪談『番町皿屋敷』を合わせた物語で、中村錦之助が勝五郎と青山播磨の二役を演じる。
 長屋に住む勝五郎(中村錦之助)の年上の女房おはま(長谷川裕見子)はしっかり者で、勝五郎が怠けて飲んだくれている窮状から、お前さん商いに精を出しておくれよ、といつもより早い時間に寝床から勝五郎を起こして、無理やりに魚河岸に仕入れに行かせる。
 早朝に魚河岸へ出かけてみると、まだ人っ子ひとりいない時間だった。
 夜が明けてようやく明るくなろうかという刻のころだったのだ。
 眠気覚ましに顔を洗おうと海の中に入ってみるというひょんなことから財布を拾う。おそるおそる紐解いてみると大金が中に・・・。
 大喜びで勝五郎は仕入れもせずに家へ戻って、財布を神棚へ隠すと朝から近所の飲み仲間の職人(千秋実桂小金治)を呼んで酒盛にドンちゃん騒ぎをするのだった。
 おはまは、その騒動の最中に神棚の巾着が落ちて大金があるのに気づく。
 夫の勝五郎には財布を拾ったことは夢の中の出来事だととぼけて誤魔化し、大金を大家に預けるのだった。
 落語の「芝浜」の筋書きに、怪談「番町皿屋敷」の筋書きが重なるという物語で、最後は勝五郎と女房おはまの落語の人情噺で終わる。
 旗本・青山播磨(中村錦之助)に見初められて、側室に勝五郎の妹・お菊(小林千登勢)が奉公に上がっている。
 その自慢の妹が青山播磨によって将軍家拝領の皿を割ったことの身代わりとしてお菊が罪を引き受けたことで、青山播磨が手討ちにしなければならなかった悔いから、同じような直参旗本の鬱屈した仲間と吉原で町奴らとの乱闘騒ぎをし火事になってしまう。
 その罪で青山播磨らの加わった直参旗本は幕府から断絶処分されるのだった。
 大家が奉行所に預けていた大金が勝五郎とおはま夫婦の元へ返される。
 ラストは、焼け出された住民のために、その大金を寄付しようと勝五郎とおはま夫婦は決めるのだった。
 中村錦之助が落語の登場人物のようなきっぷの良さや、べらんめい口調で粋な魚屋を、 長谷川裕見子が女房のおはまで、しっかり者を好演。