ジャック・ロジェの『アデュー・フィリピーヌ』

ジャック・ロジェのヴァカンス

 5月1日から5日までジャック・ロジェの作品が映像文化ライブラリーで上映される。
 初日、『アデュー・フィリピーヌ』(1960−62年、フランス=イタリア、110分、白黒)を見に駆けつける。ジャック・ロジェの作品は初めて観る。原題はAdieu Philippine。
 「ジャック・ロジェのヴァカンス」というチラシをもらった。そのチラシに語ってもらうと、

 1960年、兵役を数ヵ月後に控えたミシェルは、勤め先のテレビ局でリリアーヌとジュリエットという女の子と知り合い、ふたりの娘はミシェルに心惹かれていく。夏の休暇のプランで頭がいっぱいのミシェルは、生中継時にヘマをして局を辞め、コルシカ島で早めのヴァカンスを楽しんでいた。そんな彼のところに、リリアーヌとジュリエットがやってくる。双子のように仲良しだったふたりの仲は、嫉妬が原因でぎくしゃくし始めて・・・。永遠の青春映画と絶賛されるロジェの長編処女作。

1960年代の初期のパリの様子がスクリーンに映り、街頭の光景が映し出されるカメラワークのセンスがいい。
 この頃のフランスの映画を観ると、ジャック・ドゥミの『シェルブールの雨傘』でアルジェリア戦争が物語に影響を与えていたが、ジャック・ロジェの『アデュー・フィリピーヌ』では、勤め先のテレビ局で働いているミシェルにもあと二ヵ月半で兵役に就かなければならない。
 テレビ局を辞めた後、兵役までの時間を、早めのヴァカンスで過ごそうと地中海のコルシカ島へミシェルは向かった。
 コルシカ島はフランス人のヴァカンス客で一杯で、キャンプ場に本土からのヴァカンス客がバスで到着するたびに大歓迎があり、皆で飲んだり歌ったりダンスに打ち興じる。
 バスの客の中にリリアーヌとジュリエットがいて、ミシェルは彼女たちと再会するのだった。
 クルマで三人はコルシカ島の山道を走り、渓谷や海辺にキャンプを張りながらヴァカンスを過ごす。道中、山の中で車がエンストしている時に、ひょっこり舟が故障したと言って乗せてくれと陽気なイタリア人の男が現れる。
 このイタリア人は面白い男で、熱烈にイタリア語で歌い踊るシーンが背景のコルシカ島の夕景のなかで素晴らしい。最後に余りに三人に迷惑をかけるので、愛想をつかされてクルマからの置いてきぼりをくうのだが・・・。このシーンに苦笑する。 
 ミシェルに兵役通知が島に届き、あと二日で急いで出頭しなければならなくなり、ミシェルは港から本土へ向かう客船に乗りこむのだった。
 ラストの港から客船が離れ、ミシェルのヴァカンスは終わるのだった。
 コルシカ島に残った娘二人は、いつまでも客船へ手を振っているのだった。Fin。