ジャック・ロジェの『メーヌ・オセアン』

ジャック・ロジェのヴァカンス

 ジャック・ロジェ監督の映画『メーヌ・オセアン』(1985年、フランス、135分、カラー)を観れた。「ジャック・ロジェのヴァカンス」で上映された作品群の一本である。
 冒頭、パリの駅で急いで切符をもとめて列車に乗り込む女の動きを追って映画は始まる。
 ナント行きの「メーヌ・オセアン」号に乗り込んだ女はフランス語が分からない。
 切符の検札にやって来た検札係が女の切符に駅での検札機のパンチの痕がないから罰金を払ってくれと要求する。だが、女はフランス語が分からない外国人の旅行者で検札係と押し問答になるのだった。検札係の上司の男もやって来て三人で押し問答になる。
 そこへ通りがかった女弁護士が、言葉が分かるので通訳すると女の方に助太刀をするのだった。
 女弁護士はナントへの途中にあるアンジェで、漁師のプチガを弁護するために列車に乗り合わせたのだった。検札係とのトラブルが縁でフランス語の分からない女デジャ二ラと女弁護士は親しくなる。
 アンジェで漁師のプチガの裁判には敗訴するのだが、プチガはブラジル人のデジャ二ラが列車内で検札係とのトラブルでひどい目にあったことに義憤を感じて、彼らに会ったら懲らしめてやると言い、デジャ二ラが大西洋を望む地に行きたいということを聞いて、是非自分の住むユー島へ来るように約束をさせるのだった。
 女二人は駅で検札係のリュリュ(リュシアン)と再会する。女二人はリュリュに休日にユー島に来るように誘うのだった。
 一足先に女二人はユー島へ着く。遅れてリュリュは上司の検札長の男と二人で島にやって来て彼女らと再会をする。
 島のカフェでプチガと検札係の男二人と女二人が出会ってからが、あれよあれよと、面白い楽しい展開になる。ユー島にニューヨークからのメキシコ人の興行主がデジャ二ラを追ってやって来て、小学校のピアノを持ち出して演奏と歌とダンスに島民とともに打ち興じる。
 デジャ二ラが興に乗ってブラジルのリオのカーニバルの様相を帯びてくる。
 ラストに、飛行機に乗れずにナントへ島の漁船に乗せてもらい、浅瀬を避けながら小舟から小舟へと乗り継いで向かう検札長の男の姿がとても印象的だった。コミカルな会話、笑い、列車でのちょっとした出会いが、また次の出会いを生み出してと移動する映画。ロード・ムービー。