お化け好きの友人6

 《柳田国男の「河童駒引」にみるように、わが国のいたるとこに、いろいろな河童がいた。私自身、たまたま柳田と同じ郷里だが、その播州ではカワタロウと言った。河太郎だろう。川童とも河伯とも水虎とも書いたようだ。ハナたらしの私もまた、河童のからだが青黄色で、なまぐさい臭いがあり、溺れ死した者のヘノコ玉を抜くといったことを知っていた。頭に平べたい帽子のような皿をもち、いつもはその中に油をたくわえている。陸に上っても皿に油があるうちは強いが、それがきれると、とたんに弱くなる。》  池内紀著『悪魔の話』151ページ
 筆者によると、柳田国男の『不幸なる芸術』のなかに書いているとおり、柳田国男はわが国ではもっとも早く、かつもっとも熱心に『精霊物語』や『流刑の神々』のハイネを読んだ人という。

 お化け好きの泉鏡花は、「遠野の奇聞」で、柳田国男の『遠野物語』について、《山深き幽僻地(ゆうへきち)の、伝説異聞怪談を、土地の人の談話したるを、氏が筆にて活(い)かし描けるなり。》と述べている。

 閉伊川の淵(ふち)の河童、恐しき息を吐(つ)き、怪しき水掻(みずかき)の音を立てて、紙上を抜け出で、眼前に顕(あらわ)るる。近来の快心事、類少なき奇観なり。「遠野の奇聞」より。
 柳田国男の著作活動に、ハイネの『精霊物語』や『流刑の神々』からの影響があるのでは・・・。

 参照:「遠野の奇聞」http://www.aozora.gr.jp/cards/000050/files/48332_33336.html