『悪魔の話』を書いた池内紀さんによると、詩人ハイネには変わり者の伯父(おじ)がいて、《その伯父というのは古文書マニアで、珍書奇書の蒐集(しゅうしゅう)にふけり、親から受けついだ財産を、あらかた使いはたしたそうである。》 145ページ
そのハイネに『精霊物語』、数十年のうちに同じテーマをとりあげた『流刑の神々』がある。
《いずれも古い時代の神々のことを語っている。素朴な自然信仰のなかではぐくまれてきた神々が、キリスト教の伝播(でんぱ)につれて邪教神として抹殺され、いかにして悪魔へと零落(れいらく)させられていったか。非寛容な一神教による「神々の悪魔化」。
詩人ハイネしかごぞんじない方はおなじみがないかもしれないが、ハイネには『ドイツの宗教と哲学の歴史』といったすぐれた著作がある。亡命地パリにあって、フランスの新聞や雑誌を通じて精力的に、ドイツ古来の精神文化の啓蒙につとめた。その功によってだろう、フランス政府から四千八百フランの年金をもらったほどである。》 145〜146ページ
『精霊物語』には、「こびと」の話、水中に棲む精霊ニクセの話、白鳥の乙女についての伝説などがあり、
《ハイネが述べている悪霊たちの一つ、「水中の住人」ニクスの姿かたち、冷たい手のぐあいや、頭にのせている「みどり色の帽子」まで、わが国の河童(かっぱ)と瓜(うり)二つではあるまいか。》
150ページ *1

- 作者: ハインリッヒ・ハイネ,小澤俊夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1980/02/18
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*1:注:男性はニクスというそうだ。