鞍馬天狗と白藤幻之介のこと

 大曽根辰夫監督の映画『鞍馬天狗 角兵衛獅子』(1951年、松竹、91分、白黒)に登場する鞍馬天狗嵐寛寿郎)ですが、この大佛次郎の少年小説「鞍馬天狗伊藤彦造画の『角兵衛獅子』は、昭和二年三月〜昭和三年五月に「少年倶楽部」で連載された作品です。
 昨年、「畑耕一文学資料展」で畑耕一の小説に『剣魔白藤幻之介』という作品がありました。
 昭和二年四月〜昭和三年九月に、博文館発行の「少年少女譚海」で連載され大評判だった作品です。
 挿絵は伊藤幾久造です。
 映画を観ていて、ふと思い出したのですが、『剣魔白藤幻之介』は、昭和五年(1930年)六月に、『魔剣 白藤幻之介』というタイトルで映画化されています。
 鞍馬天狗と同じく、幕末の京都を舞台にしています。
 妖変鬼神組という正体不明な乱暴者に立ち向かう紫振り袖の美少年、白藤幻之介が妖変鬼神組と対決し舞台を江戸へと移してと物語は展開します。
 鞍馬天狗は短筒(ピストル)を使いますが、剣魔白藤幻之介は変幻自在に不思議な術を使いこなし活躍するわけです。
 畑耕一の小説と大佛次郎の小説はどちらも当時、幕末京都を舞台にした快剣士が活躍するというところから、出版社間での競作でもあったのでしょうか。興味深いところです。
 『剣魔白藤幻之介』は、三一書房の『少年小説大系』19「昭和伝奇小説集」(高橋康雄編)に収録されています。

 左は市川竜男、右は原駒子
 
 白藤幻之介(市川竜男)
 参照:「少年少女譚海」http://kanazawa-bumpo-kaku.jimdo.com/%E5%87%BA%E7%89%88%E5%88%8A%E8%A1%8C%E4%B8%80%E8%A6%A7/%E5%B0%91%E5%B9%B4%E5%B0%91%E5%A5%B3%E8%AD%9A%E6%B5%B7-%E7%9B%AE%E6%AC%A1-%E8%A7%A3%E9%A1%8C-%E7%B4%A2%E5%BC%95/

少年小説大系19

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