近藤富枝著『大本営発表のマイク』のこと3

 今日は中秋の名月。月見団子のお供えで月を眺める。

 近藤富枝著『大本営発表のマイク』を読む。
 「七章 文部省時代――悪化する戦局」に、釘本久春図書監修官と高見順のエピソードがある。 

私は高見順の美貌に驚き、欠席の時は小柄なかわいい夫人がわざわざ断りに二室までこられるのに感心した。  115ページ

 中島敦の『山月記』が高校の教科書にとりあげられた事情を、島内景二氏がその著書で述べているという記述がある。
 推薦者が釘本氏であったという。  
 高見順の戦時中の日記で、文部省へ出向いた日を見ると面白いのではないかな。

 アナウンサー時代の回顧で、昭和20年8月15日の放送局で勤務中の見聞が興味深い。
 和田信賢アナウンサーが天皇による終戦詔書玉音放送の進行を担当した。
 当日、近藤さんは、マイクのそばで和田信賢の語るのを見ていた。
 それと玉音盤(レコード)を放送局へ捜しに来た軍人を追い返した女子アナウンサーの勇気あるエピソードがある。
 歴史的な日の放送局内部の雰囲気が目に見えるようです。
 和田信賢は当時、その語り口でカリスマ的なアナウンサーだった。