迫力ある殺陣、胸を打つ人情、大らかな笑い。活劇から喜劇まで日本映画を特徴づける幅広いジャンルとして人気を集めた時代劇。4月、5月は、そうした時代劇の秀作、話題作を振り返ります。今月の上映作品は、日本映画史上のベスト・ワンに輝いた「七人の侍」、市川雷蔵の人気シリーズの第一作「忍びの者」、笑いと音楽が散りばめられた「一心太助 天下の一大事」、三船敏郎の主演で剣豪・武蔵の生涯を描く「宮本武蔵」三部作などです。この機会に時代劇の魅力をご堪能ください。(4月特集プログラムより)
今月は、「時代劇特集」を映像文化ライブラリーで開催している。
15日、沢島忠監督の映画『一心太助 天下の一大事』(1958年、東映・京都、91分、カラー)を観た。
出演は、中村錦之助、月形龍之介、中原ひとみ、丘さとみ、桜町弘子、田中春男(東宝)、堺駿二、山形勲、小柴幹治、進藤英太郎、原健策、杉狂児。
沢島忠監督は、笑いと音楽を盛り込んだ軽快な演出で時代劇に新風を吹き込んだ。一心太助に中村錦之助、大久保彦左衛門に月形龍之介という配役で、沢島監督が撮った人気シリーズの1本。御城改築奉行が企む陰謀に、太助と彦左衛門が立ち向かう。
昭和33年の東映・京都の映画である。ロケ地に京都の風景が見られる。
大久保彦左衛門(月形龍之介)の持つ空き地は、御城改築奉行の川勝丹波守(進藤英太郎)の屋敷と接している。
川勝丹波守は旗本なのだが、相模屋(原健策)という商人と結託し賄賂で私腹を肥やしていた。
そういう風潮を大久保彦左衛門は天下の御意見番として、川勝丹波守らのやり方に苦言を呈して、彼らから煙たがれていた。
その川勝丹波守(進藤英太郎)が腰元のおとよ(桜町弘子)を側室にしようとしていた。
おとよの許婚の幸吉(田中春男)は、年季の明けたおとよが屋敷から帰らないので心配で探し回っていた。
ある日、魚河岸に出かけた一心太助(中村錦之助)は、人混みの中で幸吉(田中春男)にぶつかった。
太助は荒っぽく威勢のいいべらんめい言葉で幸吉を非難した。しかし、幸吉は許婚のおとよが行方不明であることを嘆き、太助の言葉に対して、悲しくて死にたいから殺してくれと頼むのだった。
驚いた太助は、事情を聞き人助けと思って、幸吉を自分の長屋に引き取ることにした。
一方、川勝丹波守は幸吉の目を避けるために、おとよを相模屋に預けて隠した。
ちょうどその頃、太助の長屋の筋向こうに町娘の良恵(丘さとみ)が引っ越してきたのだが、良恵は太助をひと目見るなり惚れてしまった。
一心太助は魚を大久保彦左衛門(月形龍之介)の屋敷に納めている。
屋敷には太助の許婚のお仲(中原ひとみ)が奉公していたのだ。
太助は それゆえか、彦左衛門とは互いに悪態をつくほどに仲が良い。
後半、彦左衛門と太助らが幸吉の許婚のおとよを救出するために奮戦する。
頑固な御意見番の大久保彦左衛門の空き地を将軍家光に働きかけて自分のものにしようとする川勝丹波守だったが、一心太助の機知で空き地で楽器を鳴らして大勢の町衆で踊りまくるシーンは祝祭的なミュージカル時代劇だ。
中原ひとみや丘さとみの演技が愉しい。脇役の田中春男が絶妙な哀しくも可笑しい男を演じていた。
中村錦之助は一心太助と将軍家光の二役を演じている。