映画『ヨアンナ』と『わたしたちの呪縛』

映画『わたしたちの呪縛』

 4月から5月にかけて、ポーランド映画祭を開催します。
 4月は、アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた「ヨアンナ」と「わたしたちの呪縛」、4つのエピソードから成る前衛的作品「シンキング・ナプキン」といった、ポーランド映画の“今”を伝える作品や、“ポーランド派”の台頭を告げた、アンジェイ・ワイダの長編第一作「世代」などを上映します。ポーランド映画祭パンフレットより)

 アネタ・コパチ監督の映画『ヨアンナ』(2013年、45分、カラー、日本語字幕)を映像文化ライブラリーで観た。 

 アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた本作は、末期ガンの冒された母ヨアンナと息子の日常を描いた作品。ピアノ曲による美しい旋律にのせ冷静なまなざしでひとつの命を捉えたのはドキュメンタリー畑の女性監督アネタ・コパチ。柔らかいトーンで統一された映像と被写体との関係性に彼女の個性が光る。

 ヨハンナはまだ幼い男の子の母親で、車を運転しながら助手席に乗せた息子と会話をする。
 台所で二人は料理をし、天気のいい日には戸外で散歩をする。
 通院する病院での情景、息子との会話やそのしぐさ表情の描写・・・。
 情愛ゆたかな穏やかな日常風景をピアノ曲の調べとともに描いたドキュメンタリー映画であった。

 『ヨアンナ』の後に、トマシュ・シリヴィンスキ監督の映画『わたしたちの呪縛』(2013年、27分、カラー、日本語字幕)が上映された。

 ワルシャワ映画学校の生徒のトマシュ・シリヴィンスキの短編2作目となる本作は、自身の家族の日常を描いたドキュメンタリー。難病の子供を持つ両親が不安を抱えながら厳しい現実に立ち向かっていく様子を克明に記録。子供の愛らしさに心が救われる本作はアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネートの栄誉に輝いた。

 出産した赤ん坊に先天的な障害があった。眠ると呼吸が止まってしまう病気で人工的に呼吸を補助する器械を動かすことをしなければならない難病を抱えている。
 若い夫婦は、赤ん坊との一日24時間、目を離すことはできない。
 いついかなる時に赤ん坊が眠ってしまうか分からないので・・・・。
 そういった困難を抱えた若い夫婦の育児に取り組む情景を丁寧に撮影している。