年末の山茶花

 寒波がやって来た。最高気温5℃。雪混じりの寒風が吹く。晴れて日ざしの中にいると暖かく感じられる。街路樹の山茶花サザンカ)が満開で美しく日差しに照らされていた。

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 今年は、ラジオ番組で「高橋源一郎飛ぶ教室」をよく聴いた。毎回、本の紹介とゲストとのトークが興味深かった。

 先月ラジオで、小松左京の小説の「お茶漬けの味」が再放送される。耳で聞く小説である。もう一本、筒井康隆の小説「おれに関する噂」も再放送された。これも朗読劇風に脚色されて放送されたものであった。

 本日は大晦日で、あっという間の一年でした。いままで経験したことのない年でした。

 

胸中の凩咳となりにけり

 文春文庫で『マスク』というスペイン風邪をめぐる菊池寛の小説を読みました。解説が辻仁成。1920年、文芸誌「改造」に発表される。菊池寛記念館でもダウンロードで、小説「マスク」は読めるようです。

 参照:mask.pdf (city.takamatsu.kagawa.jp)

    菊池寛もマスクで予防 高松、記念館で特別展示 スペイン風邪題材に作品 | COOL KAGAWA | 四国新聞社が提供する香川の観光情報サイト

 当時の芥川龍之介の俳句にスペイン風邪をうかがわせる句はないだろうか。龍之介の俳句を調べることにした。

 大正八年(1919年)の俳句に、「胸中の凩咳となりにけり」という句がある。凩(こがらし)は、秋の末から冬の初めにかけて吹く強く冷たい風であるので、この時期に詠んだ句ではなかろうか。

 前書きが付いていて、「三汀の病を問ふ我亦時に病床にあり」とあります。三汀は、久米正雄の俳号ですね。

マスク スペイン風邪をめぐる小説集 (文春文庫)

マスク スペイン風邪をめぐる小説集 (文春文庫)

  • 作者:寛, 菊池
  • 発売日: 2020/12/08
  • メディア: 文庫
 

 

 

「本よみうり堂」から

 日曜日の新聞で、読売新聞の「本よみうり堂」の書評欄から「ポケットに1冊」で紹介された菊池寛の文春文庫オリジナル本に注目した。タイトルは『マスク』。スペイン風邪をめぐる小説集。「私も、新型ウィルスは怖い。」

 

マスク スペイン風邪をめぐる小説集 (文春文庫)

マスク スペイン風邪をめぐる小説集 (文春文庫)

  • 作者:寛, 菊池
  • 発売日: 2020/12/08
  • メディア: 文庫
 

 
 「著者来店」コーナーに待田晋哉記者による『コラムニストになりたかった』の著者・中野翠さんへのインタビュー記事が掲載されていた。「仕事を通し人と会う」
《85年から続く「サンデー毎日」の連載コラムをはじめ息の長い仕事が多い。「私は世間知らずで、ある意味優等生タイプだった。仕事を通じて人と会い、それが崩されてきた気がする。一方で、橋本治さんや坪内祐三さんら、同じ雑誌のコラムの分野で活躍する書き手の死が続き寂しく感じる機会も増えた。》

 

コラムニストになりたかった

コラムニストになりたかった

  • 作者:翠, 中野
  • 発売日: 2020/11/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

PR誌のこと

  パブリッシャーズ・レビューの「みすず書房の本棚」が届いた。みすず書房のPR誌である。ご愛読ありがとうございました、という本号をもって発行終了のお知らせがあった。

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 本紙の前身「出版ダイジェスト」に《みすず書房は七六年から特集版に参加し、勁草書房晶文社白水社農文協などと連合を組んだ時期もあります。九四年からは一社で「出版ダイジェスト みすず書房の本」が二〇一一年秋号(九月、第六四号)まで発行を重ねました。(中略)同年十二月、東京大学出版会白水社と「パブリッシャーズ・レビュー」を創刊。タブロイド判の新聞という形態だけでなく、「みすず書房の本棚」の紙面はほぼ「出版ダイジェスト」のスタイルをそっくり引き継ぎました。送料が嵩むなど諸般の事情で発行を終えますが、今後も小社の出版に心を寄せていただけますようぜひともお願いいたします。》

この3冊

 師走の風が吹く。山茶花サザンカ)の花の見られる季節になった。

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 毎年、この時期に新聞社の読書欄で、読書アンケート特集が組まれている。12日の毎日新聞の2020年の「この3冊」上に、荒川洋治さんが『山田稔自選集3』を1冊に選んでいた。

 今年、山田稔著『幸福へのパスポート』を読むことができた。フランス滞在時の旅、なかでもイタリアのローマのホテル滞在記が印象に残った。講談社文庫で四十年近く前の文庫本である。

 毎日新聞の読書アンケートで、荒川洋治さんは、《時をまといながら時を超える、現代エッセイの精華。》と記している。

 

山田稔自選集 3

山田稔自選集 3

  • 作者:山田稔
  • 発売日: 2020/07/01
  • メディア: 単行本
 

 

 

幸福へのパスポート (講談社文庫)

幸福へのパスポート (講談社文庫)

 

 

 

 

新刊広告から

 「ちくま」11月号に、寺村摩耶子著『オブジェの店』という本の広告があった。青土社の新刊だ。《無用、無益、無意味、無価値の魅力 文学・美術・絵本に出現したオブジェは人の深層意識・無意識を顕在化させ、不思議・驚異へと挑発し続ける! 本邦初の本格的オブジェ論。》

 参照:青土社 ||建築/美術/映画/音楽:オブジェの店 (seidosha.co.jp)

 

オブジェの店: 瀧口修造とイノセンス

オブジェの店: 瀧口修造とイノセンス

 

 

PR誌のこと

    先月、本屋で講談社のPR誌「本」が12月号で休刊になるというお知らせがあった。先日、最終号の「本」12月号を頂いた。いろいろ思い出のあるPR誌である。この12月号が、通巻533号目になるようだ。講談社の新刊案内と連載記事を愉しませてもらった。

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 「波」、「一冊の本」、「図書」、「みすず」、「青春と読書」は、健在である。「波」12月号の泉麻人中野翠著『コラムニストになりたかった』の書評が興味深かった。

 

コラムニストになりたかった

コラムニストになりたかった

  • 作者:翠, 中野
  • 発売日: 2020/11/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)