四つ葉のクローバー

 出版社のPR誌に「白水社の本棚」2020年秋号がある。新刊案内やコラムがあり、「愛書狂」に、『本のリストの本』をめぐるコラム記事。一部引用すると、《共著者の一人・南陀楼は書く。「インターネットのない時代には、著者や出版社、刊行年などひとつひとつのデータに重みがあったように思う」。今はたやすく情報が手に入る。しかし簡単に見つかるなら四つ葉のクローバーの値打ちはない。》

 

本のリストの本

本のリストの本

 

 

茶の花の垣たえだえに草の中

 茶畑の茶の花が見ごろになっていた。白い花びらです。初冬の花ですね。葉は長楕円形です。樹下に点々と白い花びらが散っていました。

 

 f:id:kurisu2:20201113162035j:plain

 「茶の花のとぼしきままに愛でにけり

 「茶の花の垣たえだえに草の中

 松本たかしの俳句です。「茶の花の垣たえだえに草の中」という句に「浄明寺」と前書きがあります。

「本よみうり堂」から

 読売新聞の書評欄「本よみうり堂」に、長嶋有著『今も未来も変わらない』という本の書評を村田沙耶香さんが書いていて注目しました。気になる本であります。

 書評から一部引用すると、《この小説は、その平凡な光景に実は宿っているものを、きちんと日常の中に存在させてくれている。》

 

今も未来も変わらない (単行本)

今も未来も変わらない (単行本)

  • 作者:長嶋 有
  • 発売日: 2020/09/18
  • メディア: 単行本
 

 

栗を手ぐさの松山訛のみならず

 金木犀キンモクセイ)の強い花の香りが匂う季節になりました。小さな橙色の小花が密集しています。

f:id:kurisu2:20201019162912j:plain

 

 「栗を手ぐさの松山訛のみならず

 昭和二十一年(1946年)の石田波郷の俳句です。

 この句の前書きに、「中村草田男」とあります。

 石田波郷は、草田男の松山訛(なまり)を詠んだのでしょうか。

 石田波郷といえば、結城昌治の『俳句つれづれ草』という本を思い出しました。結城昌治清瀬の病院で、石田波郷と同室であったことから俳句を学ぶようになったエピソードであります。

 

 

ジャン=ピエール・モッキー特集から

 先日「映画/批評月間 フランス映画の現在 vol.02」オリヴィエ・ペール(「アルテ・フランス・シネマ」)によるセレクションで、ジャン=ピエール・モッキー特集を観ました。

 『今晩おひま?』(1959年)、『ソロ』(1970年)、『赤いトキ』(1975年)。

  『今晩おひま?』のようなラブコメディもあれば、『ソロ』のようなB級犯罪映画で自ら主人公を演じている。テロの集団に弟がいるのを阻止しようと主人公は自分も警察に容疑者とみなされて追われながら列車に乗り、警察の目から隠れて突き進むシーンは印象的です。ドキドキハラハラします。

 『赤いトキ』に、ミシェル・シモンが出演しています。

 《フレドリック・ブラウン推理小説『3、2、1とノックせよ』から着想を得た本作は、ファンタスティックかつポエティックにフランス社会を描いたモッキーの代表作のひとつ、本作が遺作となった偉大な俳優ミシェル・シモンへのオマージュでもあり、サン=マルタン運河沿いで多く撮られていることもあり、とりわけ『素晴らしき放浪者』や『アタラント号』の記憶が蘇ってくる」-オリヴィエ・ペール》(特集パンフレットより)

 参照:

オリヴィエ・ペール講演記録「ジャン=ピエール・モッキーと奇跡の小径」

映画『ポルトガル、夏の終わり』

 アイラ・サックス監督の映画『ポルトガル、夏の終わり』(2019年)は、ポルトガルの避暑地シントラの晩夏にバカンスを過ごすフランキーという名の女優をイザベル・ユペールが演じている。癌をわずらっていて夏の終わりに、家族と友人を呼び寄せる。自らの来し方行く末を思い、集まってくる家族、元夫、友人らとの人間模様が避暑地シントラの森や海岸で繰り広げられる。

 ポルトガル世界遺産の町シントラの大西洋の海に沈む夕陽。

 しんみりとした心に残る作品だった。

 

映画『ティップ・トップ ふたりは最高』

 先月「映画/批評月間 フランス映画の現在 vol.02」オリヴィエ・ペール(「アルテ・フランス・シネマ」)によるセレクションのセルジュ・ボゾン特集を観た。
 『ティップ・トップ ふたりは最高』(2013年)と『マダム・ハイド』(2017年)である。
 二つの作品に、イザベル・ユペールが出演している。『ティップ・トップ ふたりは最高』は、警察署の腐敗などの内部監査をするふたりの女性監察官がイザベル・ユペールとサンドリン・キーベルランだ。ふたりはフランス北部の町の警察署へ派遣された。

 フランス北部でアルジェリア系の情報屋が殺された。その情報屋は、地域のドラッグの密売に関わっていたが、警察署内部を探るため、ふたりの女性監察官、エスターとサリが派遣された。ひとりは殴りこみをかけ、もうひとりは覗き見る・・・そう、ふたりは最高のコンビ! (パンフレットより)

  イザベル・ユペールとサンドリン・キーベルランのふたりの女性監察官がコンビを組んで、警察内部の腐敗を探るために送り込まれてくる。アルジェリアからの移民のドラッグ密売を取り締まる警察の腐敗と暴力的な暗部を調べるためだ。ふたりの家庭生活の秘密も描かれる。ふたりの性癖にイザベル・ユペールは、私生活で夫婦の間で「叩く」、サンドリン・キーベルランは、「覗く」という人物を演じていた。荒々しい叩く突然さ、その驚き、そのコミカルな笑いで、ふたりは最高のコンビ。