厳島神社で菊花祭、舞楽を観る

貴徳

 宮島へ渡る連絡船のデッキに上がって空を見れば、南西の空に宵の明星があった。東の方には月が高く昇っていた。ほぼ満月かな。
 厳島神社へ行く途中、やまだ屋へ寄った。帰りが遅くなると店が閉まって買えなくなるので。もみじまんじゅうを店頭で買う。いろいろな種類のもみじまんじゅうがあるので迷うが、抹茶もみじ、つぶあんのもみじまんじゅう、こしあんのもみじまんじゅう、クリーム・チーズもみじ、これらを包んでもらう。変化球としてチョコレートもみじまんじゅうなどもあるが、これは止めた。最近はフルーツもみじまんじゅうもあるというが、どこまで種類がふえるのだろう? 私がほぼ最後の客になりそうな気配。若い店員さんが、紫芋もみじまんじゅうを一つオマケに袋に入れてくれる。うーん。この紫芋もみじまんじゅうは初めて見る。新商品かな。
 もみじまんじゅうについて、私の食べたことのないもみじまんじゅうを解説されている人のHP、「もみまん通」があった。思わず食べたくなるかも・・・。
http://www.aa.alpha-net.ne.jp/usaco3/momiman/index.htm
 
 厳島神社の参拝口から神社へ入る。6時過ぎで、もうあたりは夜の闇の中。回廊をたどって高舞台へ行く。舞楽は始まったばかりであった。高舞台をおおぜいの観客が取り巻いていた。いつもより多い。いつもは、八〇人くらいだが、今夜は二〇〇人を越える人が観に来ている。
 高舞台で舞っている舞人の姿が見えにくかった。高舞台のまわりにある平舞台にぎっしり人が立っていて、脚立に上がってカメラをかまえている人や新聞社やテレビ局のカメラマンがいた。そしてアマチュアのカメラマンらが撮影している。フラッシュの光が乱れ飛ぶ。
 振鉾(えんぶ)が始まっていた。一人舞、一人舞、二人舞と続くあいだ本殿の前へ移動して遠くから高舞台を眺めていた。太鼓、龍笛の吹く曲を聴いていた。そばにいた男がイタリアのトリノから来たという。日系企業に勤めているらしい。しばし、映画の話などする。私が、フェデリコ・・・と言いかけたら、とっさに向こうが、フェリーニと言い出した。たしか、フェデリコ・フェリーニが亡くなった時、イタリアでは国葬でこの映画監督を見送った。映画『フェリーニのアマルコルド』は良かったなあ。
 そうこうしていると、観客が減ってきた。高舞台のそば、かぶりつきで舞楽を見れるところへ移動する。目の前、一メートルまで舞人が近づいてくる距離から観る。隣りの人たちと演目のことを間合いに話したりして観たり聴いたりする。
 蘇利古(そりこ)の四人舞は雑面(ぞうめん)をかぶって演じる。そのお面が四角で面白い。その後、散手(さんじゅ)の一人舞。赤い隆鼻ひげの面をかぶって舞う。勇壮な舞。
 それから、私が好きな貴徳(きとく)の一人舞だ。白い隆鼻黒ひげの面をかぶり頭巾をつけて舞う。気品のある舞で、これも勇壮だ。とても好い。最高の舞人かもしれない。
 その後は、NHK大河ドラマ義経』の冒頭で厳島神社舞楽のシーンがあるが、その舞楽蘭陵王(らんりょうおう)が演じられた。動きが速い。
 この舞の後は、二人舞の納曽利(なそり)で舞は終わった。
 長慶子(ちょうげいし)の曲が演奏される。その曲を聴きながら高舞台をあとにした。
 高舞台を取り囲む平舞台にすれすれに海面がもりあがってきた。厳島神社の回廊も海面がもりあがってすれすれになっていた。
 台風で壊れた国宝の左楽房の建物は修復されていて、建物の中で神官の方が舞楽の舞曲を演奏されていた。