山下裕二の解説

山吹の花

 桜の花が盛りのころに吹く風、それも嵐のような強い風。それを花嵐という。昨日の花吹雪に巻き込まれたのとは、打って変わって、穏やかな天気になった。
 山吹の花がポツポツと咲き始めている。『蕪村句集』に、

 山吹や井手(ゐで)を流るゝ鉋屑(かんなくず)*1

 『芸術新潮』2006年1月号の小特集「紀州の神仏、地の果ての愉楽」で、山下裕二の「ヒーローとユーレイ 修験の美術はおもしろい」というタイトルの解説を読んだ。談話を文にしているが、その例えが分かりやすく面白い。

 空飛ぶヒーロー。とするとよその国から来た蔵王権現ウルトラマンかな。・・・・・・そうか、ようするに修験道というのはスーパーマンウルトラマンの出会いから始まる宗教で、そうしたアクション・ヒーロー的要素が民衆に受けたんだね。山岳修行だってファイト一発、スポーツみたいなものだからわかりやすいし。ややこしい教義を説く坊さん(文化人)よりも山伏(スポーツ選手)のほうに人気が集まったのは当然でしょう。  177頁

*1:井手。脚注に、京都府綴喜郡南部の歌枕。山吹・蛙が詠まれてきたとある。