イチジク畑でイチジクが暗紫色に熟している。今が食べ頃である。
最終上映時間からなので、オハギとヨモギオハギで腹ごしらえをして、黒木和雄監督の映画『紙屋悦子の青春』をサロンシネマ1で観た。観客は15人ほどで、それほど混んではいなかった。
昭和二十年三月から四月にかけての戦時下の日常を淡々と描いた映画だった。紙屋悦子(原田知世)は三月十日の東京大空襲で東京出張中の両親を亡くして、いまは鹿児島の田舎で兄(小林薫)と兄嫁(悦子の同級生・本上まなみ)との三人暮らしである。その兄の後輩明石(松岡俊介)から、紙屋悦子へ縁談が舞い込む。
悦子のお見合い相手は航空隊の永与(永瀬正敏)で、明石の友人である。
お見合い当日に、兄と兄嫁が熊本に行って留守の間に、一人でお見合いをすることになる。永与、明石、悦子の間での会話に、笑いをこらえきれなかった。
オハギ、お茶(静岡産)を戦時下の物資が乏しくなったなかで美味しいと言い味わう。四角い弁当箱をめぐって、永与と悦子の間の言葉のすれ違いが、とりわけ可笑しかった。
それだけに、沖縄戦へ出撃して行った明石への悦子の悲痛な叫びが、海鳴りのように耳に残った。原田知世が悦子役を好演している。
この映画を観ていて、ふと荒俣宏の『決戦下のユートピア』を思い出した。
- 作者: 荒俣宏
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1999/08
- メディア: 文庫
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (14件) を見る