紅葉狩りと饅頭

紅葉谷公園

 この週末が最後の見頃であろうと紅葉狩りに出かけた。フェリー乗り場は行列が出来るほど混んでいた。団体客の列を横に見ながら桟橋を渡る。船内は満席で、上の甲板に上がって風に吹かれながら宮島へ渡った。
 参道は初詣のように混んでいた。紅葉谷公園の入り口にある旅館岩惣(いわそう)の庭から眺められる紅葉がとても鮮やかだった。錦秋(きんしゅう)である。
 紅葉谷を登って行くと茶店があり、池のそばの紅葉の赤がとりわけ印象的だった。鹿が何頭もいる。鹿が近くに来るので記念写真を撮る人びとや、紅葉を撮る人びと、紅葉を眺める人でにぎやかだった。うーん。紅葉を満喫する。
 帰りに、やまだ屋に寄って、もみじ饅頭を買う。店内に座って休める席があるので、まだ暖かいもみじ饅頭を食べながら一休みする。お茶も頂けてほっとした。
 『青春と読書』に連載の茂木健一郎の「欲望する脳」⑳〈一回性を巡る倫理問題〉を読んだ。

デジタルの利便性は大いに結構。しかし、その一方で私たちの人生のはかない一回性は一向に変わらない。朝に生まれ、夕べに死す。夢のように短いカゲロウの生と人間の生の間に、本質的に何の差異があるだろうか。
 一回性に向き合うことでしか、人々は生の充足感を得ることができない。その肝心の頼りは、しかし、予定も管理もできないやっかいな代物である。一回性の本質を考え、それにどう向き合うべきかという倫理問題を考察することは、生の躍動を響かせるためにどうしても必要なことだろう。  65頁