街路樹にザクロの実が鈴なりだった。
日中は最高気温が三十四度で南風が吹く。
夜半になって、虫の音(ね)が聞こえて来た。コオロギかな。
参照:「コオロギの鳴き声」http://www.nat-museum.sanda.hyogo.jp/wave/wav_korogi.html
うーむ。どうやら、この鳴き声はエンマコオロギだ。
蕪村の句に、
虫売のかごとがましき朝寝哉*1
明和六年八月三日の句である。
京都の町では、この時期に虫売りが往来を歩いていたのだね。
人々は買った虫の鳴き声を愛でていたのだろう。
虫ではないが、池澤夏樹の『母なる自然のおっぱい』(新潮文庫)を読む。
この中で「狩猟民の心」でアイヌの人々の民話をめぐって筆者が書いているところは、梅原猛の『日本冒険』で述べられている「ユーカラ」の話に繋がっているような気がした。
文庫版のあとがきに、
狩猟採集民たちの倫理観を知って感動するのは嬉しいことだった。人の心は反抗や糾弾よりも共感の方に喜びを見出すように作られている。それを信じなければ文章など書けない。ふわっと豊かなもの、暖かい日溜(ひだ)まり、花の匂(にお)い、見ず知らずの相手の一瞬の好意、そういうものの価値が人生の土台になるべきなのだ。 290〜291ページ
その後、池澤さんが朝日新聞に連載した『静かな大地』へ繋がる思いが、すでにこの本にも見られる。