「未開と文明」と『学問の春』

本はねころんで」さんで、山口昌男さんの新刊『学問の春』をめぐって興味深い話を楽しんで読んでいます。
 ところで、9月7日の《山口昌男さんのもので平凡社からのものはというと、なんといっても「未開と文明」であります。これは編著であるのですが、なんとなく山口昌男さんの代表的な一冊のように思えます。ほとんど著書のない山口さんを編者にしたのは鶴見俊輔さんでしたろうか、とにかくあの一冊はインパクトがあったことです。69年 現代人の思想というシリーズの一冊でした。》
 あの一冊はインパクトがあったことです、とありますが、薄い箱に入った装丁の本でしたね。
 この本の編者に山口さんを選んだのは、平凡社の当時の林達夫さんだったと思います。

 三浦雅士さんが聞き手になって山口昌男さんへのインタビュー集で、『語りの宇宙』(冬樹社)という本がありますが、その中で、「仕掛けとしてのエディターシップ」に、つぎのような話があります。(聞き手:三浦雅士さん)

――百科辞典という編集のありようがきわめて新鮮だったわけでしょうね。『未開と文明』の場合にも、たとえば江藤淳さんの論文やなんかが組み込まれたりしていて当時たいへん話題になったわけですね。非常に新鮮な印象を与えた。
山口 あの『現代人の思想』というのは林達夫が顧問的な立場にあったわけですね。で、林さんが人類学的なものは山口にやらせろといったわけです。当時、平凡社では山口なんて知らないわけですから、非常にリスクが大きかったと思うんですよ。しかし、結局、林達夫の指示で依頼してきたわけです。ですから林さん自身が編集者、きわめてすぐれた編集者であるといえると思うんです。もともと百科辞典を日本に生かした人なんですからね。  249〜250ページ 原文のまま。