成瀬巳喜男監督の映画『稲妻』

稲妻

 「高峰秀子特集」の一本、成瀬巳喜男監督の映画『稲妻』(1952年、大映、87分、白黒)を観る。
 出演は高峰秀子浦辺粂子、三浦光子、村田知英子、小沢栄、植村謙二郎、香川京子根上淳
 脚本は田中澄江である。
 11月プログラムから引用すると、
 林芙美子の同名小説の映画化。東京の下町に暮らす一家の物語。今の生活に不満を感じていた末娘(高峰秀子)は、母や兄たちの不甲斐なさに愛想をつかし、家を出て自立しようとするが・・・。生活感あふれるタッチで家族の葛藤を描く。 
 冒頭、観光バスガイドをしている清子(高峰秀子)の乗るバスは、銀座の通りを走っている。
 高峰秀子が東京の観光ガイドをしている場面で、新橋から銀座一丁目から八丁目へとつづく銀座・・・と、いう風に乗客に観光案内している。
 観光バスの窓から当時の東京の街の風景を見ることができる。
 柳並木の銀座の街並み、隅田川隅田川にかかる橋の風景。
 まだ観光バスはボンネットバスで、今では見なくなったオート三輪も通りを走っている。
 パン屋の綱吉(小沢栄)の乗るスクーターはラビットスクーターかな。
 東京の下町の路地で、物売りや傘の修繕屋が歩いて回っている。
 母親おせい(浦辺粂子)は四度結婚して、それぞれ父親が違う娘三人と息子を育てた。
 清子は末娘で、長姉(村田知英子)と次姉(三浦光子)のそれぞれ夫婦のうち、次姉の夫が急死しその保険金目当てに目の色を変える家族にうんざりした清子は、世田谷へつてを頼って隠れるように引っ越しをしてしまう。
 隣家の兄(根上淳)と妹(香川京子)の二人に自分の境遇と違うすがすがしいものを感じるのだった。
 心配して探し当てた母おせいは、世田谷で間借りしている娘の清子に会うといつものような愚痴を言うので、清子と母親とは親子で口喧嘩をするのだった。だが、二人とも溜まっていたストレスを吐き出したためかあきらめたかのように和解する。
 親子喧嘩をした部屋から夜空に稲妻が走る。
 家へ帰ると言う母おせいを、清子は駅まで見送ると言い、二人は夜道を歩いて行く。
 二人の姿がしだいに遠ざかって小さくなって行く。
 ラストがいい。