PR誌から


 映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』を観たあとに読んだ新潮社のPR誌『波』5月号の特別エッセイ「あの日、ヒトラーを見た私」(安西篤子)からもう少し引用してみる。

 安西さんがヒトラーがドイツで台頭した頃にベルリンのアムパーク十五番地のマンションに住んでいた時の話です。

 《向かいのマンションには、当時、人気の映画スター、マルレーネ・ディートリッヒが住んでおり、ときどき見かけた。
 私どものマンションの持ち主は、ユダヤ人で、ナチスが勢いを得てきたため、危険を感じ、市外のワンゼー(湖)のほとりの別荘に移り、あとを家具つきで、私どもに貸したという。(中略)
 日本へ帰ってからも、両親はときどき、大家さんのことを思い出して、話していた。ひどい目に遭っていないだろうか、アメリカへでも逃げていればいいが、と云っていた。》*1

 池内紀著『ヒトラーの時代』を読むと、ドイツ文学者として避けて通れなかった課題を池内紀さんが書いている。
 

 参照:『ヒトラーの時代』に込められたもの(川本三郎

https://www.shinchosha.co.jp/nami/tachiyomi/20190927_2.html