「小説世界のロビンソン」から

 晴れのち曇り、最高気温25℃、最低気温15℃。

 花梨(カリン)の樹の枝に実が鈴なりである。

 収穫期は10月から11月という。花梨の樹は高木で、下の方の枝に付いている実を触ってみた。大きさは小さな林檎ほどあった。

 小林信彦著「小説世界のロビンソン」を読み続けている。

 「第九章 推理小説との長い別れ」のひとつ前の「第八章 〈探偵(たんてい)小説から〈推理小説〉へ」に、推理作家・加田伶太郎の「風のかたみ」について触れられているのに注目しました。

 小林さんは、つぎのように語っている。

 《「風のかたみ」(昭和四十一年一月号~四十二年十二月号「婦人之友」)は、谷崎潤一郎の「乱菊物語」(未刊)とならぶ王朝伝奇小説の秀作だと思うが、検非違使(けびいし)庁の鬼判官・高倉の宗康=怪盗不動丸という趣向で、読者をあっといわせる。かつて福永武彦の原稿をとりに通った都筑(つづき)道夫氏に教えられたのだが、「廃市」の作者は、実は、角田喜久雄の愛読者だったそうで、さもあろうと頷(うなず)ける。》

 《それはともかく、福永作品=純文学という隠れ蓑(みの)の下で、大時代なトリックを使ってみせた作者の推理小説心(ごころ)は、何人かの読者には通じたわけで、作家の幸せとは、たとえば、こうしたものなのだ。》

風のかたみ / 福永 武彦【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア