梅棹忠夫の『わたしの生きがい論』

 快晴、街路樹の紅葉が目に鮮やかだ。イチョウの黄色い葉はやや色があせて、葉は三分の一ほど枝から散っていた。紅葉狩りといえば、梅棹忠夫の『わたしの生きがい論』1985年(講談社文庫)で、「風流人の自制」ということをめぐって面白い考えを語っていた。「未来社会と生きがい」という題でゼミナール形式の「講座」。

 役にたたないことこそ一番いい生き方なんだ。役にたつことをいかにして拒否していくか、ということですね。これは、わたしはたいへんえらい思想だとおもう。論理的にこれをやぶろうとおもっても、ちょっと歯がたたないですね。人類が生んだ最高の知恵といいますか、二千年も昔に、えらいことをいった人があるものだとおもいます。
 結果のない人生、目標のない人生、あるいは達成、アチーブメント、進歩というようなことのない人生というものを一つかんがえてみようじゃないか、というわけです。  89頁

 梅棹忠夫荘子の「散木論」をめぐっての話が興味を引く。荷風散人こと永井荷風の「散」の生き方につながる。材木と散木ということ。