十三夜の月

カンナの花

 通りの歩道に沿って、カヤツリグサが生えていた草地があったが、すっかり刈られていた。そばに、カンナの花が群生している。オレンジ色である。短くなった草地から草いきれがする。
 夕方、十三夜の月を眺める。木星が月の右手上に明るく光っていた。蕪村の句に、「夜水とる里人の声や夏の月」。
 「あなたは天の川を見たことがあるか。」で始まり、「あなたは天の川を見たことがあるか。」という文で終わる松山巌の『手の孤独、手の力』(中央公論新社)を読む。
 「あとがきとして」に、文章の大半は、いままで単行本に収録しなかったものをまとめたものであるという。 坂口安吾鈴木志郎康幸田露伴山之口獏石垣りん三島由紀夫、寒川鼠骨、柴田宵曲須賀敦子などにふれた文もあり、とりわけ幸田露伴小野二郎に引き寄せて論じているあたりが興味深い。
 『紅茶を受皿で』(晶文社)の小野二郎である。