「アジア映画特集 中央アジアの国々」からの1本。
11日、キルギスのアクタン・アリム・クバト監督の映画『明りを灯す人』(2010年、キルギス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、80分、カラー)を観る。
出演は、アクタン・アリム・クバト、タアライカン・アバゾバ、アスカット・スライマノフ。
パンフレットに、
キルギスの小さな村に、村人から “明り屋さん”と呼ばれ慕われている電気工がいた。ある日、国会議員に立候補した男性が票集めのためにやって来るが・・・。政治的変革に翻弄されながらも慎ましく生きる人々の未来への希望を詩情豊かに描く。
冒頭のクレジットを見ていると、映画の原題が明りを盗む人とあった。
映画のタイトルを「明りを灯す人」としているのは、この映画をじつにうまく言ったものだ。
名タイトルである。日本語字幕は、関冬美。
冒頭、小さな簡単な風車が映る。場面は一転して、室内の電力計に細工をしている男が登場する。
主人公のキルギスの村の電気工で明り屋さんと呼ばれている。
貧しい家の電力計に料金を電力会社へ払わないですむように細工をしている。
つまり、明り屋さんは原題の「明りを盗む人」なのだ。
村での生活がグローバリゼーションの影響か、人々は街に働きに出て村は寂れている。
そういう村に国会議員に立候補する男がやって来て、中国人の投資家の大規模な風力発電の事業を村に誘致する話を村長に持ちかけてきた。
その話を村長は強く拒んでいたが、急死してしまう。
次の村長は風力発電のプロジェクトへ賛成に回った。やれやれ。
キルギスの寒村に国境を越えて中国人投資家がやって来て、風力発電事業のプロジェクトの話に乗る賛成派、明り屋さんは電気工としての仕事が増えるのだったが・・・。
賛成派のやり方に反対して、賛成派に乱暴され川に明り屋さんは捨てられた。
だが、ラストで、明り屋さんが自転車に乗って軽快に走っているシーンで映画は暗示的に終わる。
アクタン・アリム・クバト監督自身が、主人公の明り屋さんを好演している。