「アジア映画特集 中央アジアの国々」と題して上映している作品の1本。
9日、カザフスタンのセルゲイ・ソロヴィヨフ監督の映画『白い鳩』(1986年、旧ソ連・カザフスタン、99分、カラー)を観る。観客は40人ほど。
出演は、スラーワ・イリュシチェンコ、リュボミラス・ラウツァヴィチュス、リュドミーラ・サヴェーリエワ。
パンフレットより引用。
モスクワからカザフスタンの小さな町に疎開してきたイワン。ある日、イワンは白い鳩を捕まえるが・・・。カザフスタンを舞台に、母を亡くし、負傷した父と共に戦後の困難な日々を生き抜いた少年の成長を描く。ヴェネチア国際映画祭特別賞受賞。
冒頭、ドストエフスキーの言葉がスクリーンに映し出される。
その意味はおおよそ子供の頃の良い想い出は人生で大切なものだ、といった教訓のような言葉がドストエフスキーから引用されていた。
冒頭、ロケットが宇宙空間へと地上から発射されて上昇して行く。
宇宙飛行士が無重力の世界で船内活動をしている。
一転して、第二次世界大戦が終わってから一年前後の時期のカザフスタンに生きる少年の日々を描く。
少年の趣味は鳩を飼うことで、鳩小屋に数十羽もの鳩を飼っている。
同好仲間の大人や子供らは、白い鳩に目がない。
ある日、イワンは白い鳩が空を舞っているのを見つける。
手に入れようと、イワンは鳩を追いかけた。
廃屋になった工場の建物に逃げ込んだ白い鳩をイワンは捕獲しようと入り込んだ。
屋上に上り、網でついに捕らえたが、滑って屋上から身体がぶら下がってしまった。
絶体絶命の危機を下から見ていた人に助けられて、命拾いと無事に念願の白い鳩を手に入れたのだった。
だが、その白い鳩を欲しがる大人がいて金を出すから譲ってくれと要求するのだった。
イワンは、自分の白い鳩を宝物のようにしていたので拒んだ。
しかし、その鳩はその大人によって小屋を荒らされ盗まれてしまうのだった。
悔しさと怒りで感情を満たすイワン。戦争で負傷した父と母亡きあとを二人で懸命に生きるイワンの少年時代を描いている。
ラスト、再びロケットが宇宙空間へ飛び出していく最初の冒頭のシーンに戻り、宇宙飛行士の船内活動のシーンで終わる。
余談であるが、セルゲイ・ソロヴィヨフ監督に、映画『想い出の夏休み』がある。
少年少女の甘酸っぱくもほろ苦いひと夏の想い出を描いているのだが、映画『白い鳩』の甘酸っぱさのない苦さも味わい深い。