映画『破れ太鼓』

「生誕100年 木下惠介監督特集」が2月、3月の2ヵ月にわたって上映されている。
 2月に観たうちの1本。
 木下惠介監督の映画『破れ太鼓』(1949年、松竹、108分、白黒)の出演は阪東妻三郎、村瀬幸子、森雅之、小林トシ子、木下忠司、大泉滉桂木洋子沢村貞子宇野重吉滝沢修東山千栄子、小沢栄。
 2月プログラムに、
 津田家では、“破れ太鼓”と呼ばれる頑固な父親に手を焼いていた。暴君的な父親の振る舞いに、家族はそれぞれ反抗を試みるが・・・。時代劇スターの阪東妻三郎が現代劇に出演した異色のホーム・コメディー。
 一代で土木会社を興(おこ)し、豪邸に住む一家の物語。
 長男は、土木会社を継ぐのを嫌がり、反対する父に隠れてオルゴール会社を資金をおば(沢村貞子)から借りて作ろうとしている。
 “破れ太鼓”と呼ばれる父親を阪東妻三郎、その妻を村瀬幸子、長男を森雅之、次男を木下忠司、長女を小林トシ子、次女を桂木洋子、三男を大泉滉、四男を大塚正義。
 これが津田家の家族である。頑固な父親の阪妻阪東妻三郎)、大泉滉など登場人物がコミカルなキャラクターで笑える。
 次女の桂木洋子は演劇の学生で、シェイクスピアの芝居で「尼寺へ行け」のセリフを家の中で演じ芝居の稽古をしている。かなりエキセントリックな人物に演出している。
 次男はピアノで「破れ太鼓」という曲を弾いて歌っている。
 暴君的な父との反抗を試みる兄弟姉妹のある日、長女(小林トシ子)は父とバスに乗っていて父が混雑していて乗客の青年のカンバスの絵を破ってしまった。
 それがきっかけで、長女はその野中青年と親しくなった。
 貧乏絵描きの野中青年(宇野重吉)は、仲むつまじい両親と暮らしていた。
 その父親を滝沢修、母親を東山千栄子が演じている。
 野中青年の両親は、昔バイオリンの勉強でパリに住んでいた父と、絵の勉強でパリにやって来た母とが出会って結婚した。
 パリで出会ってからも帰国してからもパリ時代そのまま仲むつまじく暮らしている様子を滝沢修東山千栄子が、非常に魅力的に演じている。
 宇野重吉と小林トシ子が火の見櫓(やぐら)へ上って星空を眺めながら語り合うシーンも印象的だ。
 ガミガミ怒鳴る「破れ太鼓」の阪東妻三郎の存在感が凄い喜劇である。