今月(9月)の「生誕100年 宇野重吉特集」で、35ミリフィルムに残された宇野重吉さんの出演作を上映している。
12日に豊田四郎監督の映画『雁』(1953年、大映東京、104分、白黒)の後、翌日13日に上映された吉村公三郎監督の映画『西陣の姉妹』(1952年、大映京都、110分、白黒)を観た。
出演は、宮城野由美子、三浦光子、津村悠子、東山千栄子、田中絹代、宇野重吉、進藤英太郎、菅井一郎、三橋達也、柳永二郎、殿山泰司。
脚本が新藤兼人、撮影が宮川一夫、助監督に三隅研次、音楽は伊福部昭。
全盛を誇った西陣の織元・大森孫三郎は、時代の流れには勝てず莫大な負債を残して亡くなる。後には、久子、芳江、富子の三姉妹が残される。番頭の幸吉(宇野重吉)は店を立て直そうと努力するが・・・。老舗の没落を哀愁をこめて描いた作品。(特集パンフレットより)
西陣の織元である大森孫三郎(柳永二郎)は莫大な負債をかかえて自殺した。
大森家での孫三郎の葬儀に集まる人たちの中に、元芸者の染香(田中絹代)の姿があった。
孫三郎に囲われ者の染香を田中絹代が演じている。
葬儀のあとに、高利貸しの高村(菅井一郎)が祇園で遊んでいた時に、宴席で染香は高村に偶然に出会った。
孫三郎とのことで嫌味を高村から言われ乱闘になり、胸のすくような啖呵(たんか)を切る染香の田中絹代の場面があるのだが、貫禄の演技だ。
負債が残った織元の大森家を再建するために、番頭の幸吉(宇野重吉)が大森家の建物を抵当にして高利貸しの高村から金を借りて店を再建しようとしたが、織物が売れず再建に失敗する。高村は、家に伝わる美術品を売り払ってでも借金を返せとせまり、勝手に美術品を安く古物商へ売ってしまう。
怒った幸吉の宇野重吉は家に伝わる刀で高村の菅井一郎に傷を負わせ警察へ連れて行かれた。
京都の街中を宇野重吉が菅井一郎を切りつけようと追っていくシーンが印象的だ。
必死に逃げる菅井一郎、追いかける宇野重吉の場面、ハラハラドキドキする。
再建の望みが絶たれて、とうとう織元の土地と建物を手放すことになり、その最中に孫三郎の妻のお豊(東山千栄子)も亡くなる。
働いていた者も去って行く。老舗の店が今は土地だけになっている場所を訪れた幸吉らは西陣から去って行く。