「生誕100年 宇野重吉特集」が上映されている。その中の一本、
豊田四郎監督の映画『雁』(1953年、大映東京、104分、白黒)を鑑賞した。
出演は、高峰秀子、芥川比呂志、宇野重吉、東野英治郎、三宅邦子。
美術を木村威夫が担当している。音楽が團伊玖磨である。
9月プログラムから引用すると、
明治時代の東京、高利貸しの愛人となり無縁坂に住むお玉は、坂を散歩する学生・岡田にほのかな恋心を抱く。しかし、岡田はドイツに旅立つことになり・・・。大掛かりなセットによって無縁坂を再現し、森鷗外の原作を豊田四郎監督が情緒たっぷりに映画化。
岡田を芥川比呂志、岡田の学友の木村を宇野重吉が演じる。
高利貸しの末造(東野英治郎)は、呉服屋だと称して、先妻が亡くなったからと言い、お玉をだまして妾にする。
末造は妻のお常(浦辺粂子)とそのことをめぐって争いが絶えない。
高利貸しで儲けたお金で世の中は何でもできると思っている。お玉は父を養うために末造の妾になった。
お玉が住むことになった無縁坂の隣家の裁縫の師匠を三宅邦子が演じる。
お玉へ呉服屋(実は高利貸し)への縁談話を持って来る世話好きの女を飯田蝶子が演じる。
明治時代のまだ夜はランプの生活の時代を背景に、無縁坂を毎日のように通る学生の岡田とのお玉の悲恋を叙情的に描いている。
無縁坂をセットでこしらえているが、高低差があって上り下りする人々の様子が作品の舞台の地形的な背景を見事に再現していた。
左の写真に高峰秀子、右の写真に宇野重吉(左)と芥川比呂志(右)。