街路樹の生け垣のツツジが咲き出した。
道端の草地に、一面にクローバーの花が咲き競っている。
まだ蜜蜂は見かけない。
「行春や波止場草なる黄たんぽぽ」
「春惜しむ水にをさなき浮葉かな」
「梅の実のいま少しほどふとりゐき」
中村汀女の俳句で、昭和九年(1934年)の句。
新刊の川本三郎著『ひとり居の記』と『東京抒情』を読んだ。
『ひとり居の記』の「荷風ゆかりの碧南市へ。」に川本三郎さんが永井荷風の先祖の展覧会に、愛知県碧南市の美術館を訪れた話を書いている。
《永井荷風は、本人があまり語らなかったが、三河国(現在の愛知県)の戦国大名、永井直勝の一族になる。
直勝は徳川家康に仕えた。荷風が終始、旧幕びいきだったのはこのためかもしれない。》
展覧会の翌朝、名古屋から恵那へ出て、明知鉄道に乗った川本三郎さんが、明知鉄道の沿線を見て、漫画家の勝川克志さんの作品に思いを馳せている。
《こけしのような丸い子供たちの絵が特色。昭和三十年代、子どもたちがまだ野や山で遊んでいた懐かしい時代を好んで描く。
勝川さんの故郷が明知鉄道の沿線。なるほど、あののどかな村童と呼びたいような子供たちの世界は、この鉄道から生まれていたのかと納得した。
旅から帰って、勝川さんの少年時代を描いた『庄太』(さんこう社、二〇〇七年)を読み返す。》

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