川島雄三監督の映画『銀座二十四帖』

映画「銀座二十四帖」

 今月(6月)の「月丘夢路特集」からの一本で、川島雄三監督の映画『銀座二十四帖』(1955年、日活、117分、白黒)を鑑賞。
 原作・井上友一郎の小説「銀座二十四帖」、脚本・柳澤類寿、助監督・今村昌平

 出演、月丘夢路三橋達也河津清三郎北原三枝大坂志郎浅丘ルリ子芦田伸介岡田真澄
 

自らの肖像画を描いた人物を探す京極和歌子(月丘夢路)、銀座の街から覚せい剤を一掃しようとする花屋のコニイ。すべての鍵を握るのはG・Mというイニシャルの人物だった。月丘夢路三橋達也の主演で、銀座を舞台に恋と謎解きとアクションの物語が展開される。

 落語家が落語の前置きにする小話(こばなし)を枕(まくら)という。
 映画の冒頭は落語の枕のような感じで展開される。
 森繁久彌のナレーションで語られる昭和三〇年の東京の銀座、その戦後復興した風景が空撮されている。広がった街並みが眺められ、銀座のデパートや通りを行く路面電車オート三輪、荷台の付いたオートバイなどをはじめとする交通事情が記録されている。
 銀座にまだ橋があり掘割があり埋め立てられてはいず、東京オリンピック以前の東京・銀座一帯の風景が見られるのも貴重な映像だ。
 
 銀座の花屋のコニイ(三橋達也)は、芝にある花市場で仕入れた薔薇の花を荷台のあるオートバイに乗せて銀座の店に持ち帰った。
 花屋で働く三人の少女の一人が、ルリちゃん(浅丘ルリ子)だ。*1
 その日、銀座を歩いていた京極和歌子(月丘夢路)は店先に薔薇の花を見つけた。
 薔薇の花を買ったことからコニイ(三橋達也)と知り合い、店で働くことになるのだったが・・・。
 物語は、和歌子は満州奉天にいた少女時代に自画像を内地から流れて来た画学生に描いて貰った。
 行方不明の夫との離婚を考えている和歌子は父の収集していた油絵を売って自立の資金にしようと画商に絵を見せたときに、画商のすすめでG・Mのサインのある少女時代の自画像も画廊に展示した。
 もしかしたら、G・Mのサインの作者が見て、再会ができるのではないかと希望を託して・・・。
 コニイは、この絵とG・Mのサインを見て驚き、自分もG・Mのサインの人物を探しているという。
 コニイは、以前に覚醒剤に手を出したジープの政(佐野浅夫)を更生させようと店に雇っていたが、最近また手を出していると知り、問いただすと、G・Mと呼ばれる男がボスの組織から入手していると言って、店を辞めて去った。
 コニイは、銀座の闇の帝王のG・Mというイニシャルの人物を求め、キャバレーへ探りに潜入するのだった。
 銀座の闇の世界のG・Mの子分らと乱闘騒ぎに巻き込まれる。
 はたして、G・Mとは何者か。謎が謎を呼ぶ。
 逃げる闇の帝王のG・Mを追い詰めるクライマックスの驚き。 

 仲町雪乃(北原三枝)は、和歌子(月丘夢路)の大阪に住む姪(めい)で、ファッションモデルのコンテストのために和歌子が身を寄せている和歌子の義理の母の料亭へ上京して来た。
 その料亭を毎日、外の掘割のそばから油絵で描いている絵描き(大坂志郎)がいる。
 なぜ、毎日そこで描いているのかラストで明らかになるのだが、巧妙な伏線である。
 スタイルのいい北原三枝お転婆ぶりも見どころである。必見!
 
 映画は後半、東京だけでなく、大阪を舞台にして、難波の高島屋の屋上から御堂筋を見通す風景、岡田真澄がピッチャーでボールを投げる大阪球場の映像も貴重だ。 
 大坂志郎北原三枝の恋のゆくえも、気になるところだが、(落語風に)お後がよろしいようで。

*1:浅丘ルリ子は、デビュー作の井上梅次(うめつぐ)監督の映画『緑はるかに』(1955年)でも、ルリ子という名前で出演している。15歳の子役である。