『東京マダムと大阪夫人』

 18日は、二十四節気のひとつ雨水である。

 二月十九日ごろ。水ぬるみ、草木の芽が出始めるころの意。  『大辞泉

 14日は気温が上がって、21度を超(こ)え暖かかった。
 17日は一転して寒くなり、寒風に牡丹雪が混じる時もあった。
 「名作映画 川島雄三監督特集」が映像文化ライブラリーで2月、3月と合わせて18本上映されるというので、いそいそと駆けつける。
 17日、「東京マダムと大阪夫人」(1953年、松竹、96分、白黒)を観る。
 
 映画は昭和28年ごろのある住宅団地が舞台である。
 電気洗濯機がぼつぼつ家庭にも入りかけている頃で、まだ洗濯板とポンプ式の井戸水で洗濯をしている時代である。
 二組のサラリーマン夫婦がお互いに会社の同僚で、アヒルが丘という住宅団地の社宅でも隣同士である。お互いが出世などで張り合っている。
 三橋達也月丘夢路(東京の下町生まれ)の夫婦と大坂志郎と水原真知子(大阪の船場育ち)の夫婦を主人公に描いた喜劇なのだが、東京マダムの妹の康子(芦川いづみ)と大阪夫人の弟の八郎(高橋貞二)が、それぞれの家へ居候として転がり込んで来る。
 康子と八郎の恋のゆくえに、会社の専務の娘(北原三枝)が八郎に一目ぼれして、三人が入り乱れての恋の駆け引きがはじまる。それを応援する東京マダムと大阪夫人の、東京と大阪との対抗意識で夢中になる様子を描いて面白かった。爽やかな喜劇映画。
 映画の冒頭で、アヒルの群れがガーガー鳴く。
 そして、最後のシーンもアヒルの群れがガーガー鳴くところで幕となるのだった。
 このフイルムは東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品。音楽は木下忠司 。原作は藤沢桓夫
東京物語』が公開された頃に川島雄三監督の、この映画が公開されていたんだなぁ。